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【下部尿路感染症(LUTI)②~診断方法・治療法~】~"すきま時間"の獣医学~

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【はじめに】

今回は『下部尿路感染症』の診断方法と治療法についてです。下部尿路感染症にはいきなり細菌感染が起こるものと、腫瘍や尿石症などの原因疾患があって起こるものがあります。今回は診断方法と治療法について紹介します。

 

【目次】

 

【診断方法について】

『血液検査』

血液検査は異常が見られない場合もあります。特に病変が膀胱や尿道に限局している場合は血液に病状が反映されにくいです。

しかし、重篤化し敗血症が起こり、全身へ波及した場合は『白血球数の増加』や『好中球の左方移動』『BUN』、『Cre』の上昇が認められます。

『尿検査』

一般的な検査
色調は赤褐色を示します。尿のpHはウレアーゼ産生菌によって尿素がアンモニアに変えられてしまうため、7以上を示します。

細菌尿の測定
カテーテル採取尿で尿1mLあたり100,000個以上の細菌が得られると、尿路感染が起こっていると判断できます。逆に細菌数が10,000個以下の場合はただの汚染と見なします。
測定方法としては1000倍率の1視野で細菌が20個以上確認できれば、細菌尿と言えます。

細菌培養検査
この検査方法は尿を採取して、培養キットに入れて、検査会社に送る外注検査です。なるべく正確に検査を行うためのポイントは以下のようなものがあります。

・抗菌薬使用前に採取
・抗菌薬断薬後5日以上で採取
・膀胱穿刺による無菌的な採取

これらに注意することで、より正確な診断が可能になります。
ここで細菌尿を検出できた場合、確定診断することができます。

『レントゲン検査』

腫瘍や尿結石、尿道の異常など、構造的・機械的な異常が認められる場合はレントゲン検査で診断ができますが、異常が見られない場合も多々あります。

気腫性膀胱炎
ガス産生菌が増殖すると、膀胱に気腫(空気の塊)ができます。気腫性膀胱炎では糖尿病も疑っておく必要があります。

『超音波検査』

膀胱粘膜の厚みや膀胱内にある結石を評価することができます。こちらも正常像であっても膀胱炎の存在を否定することはできません。

『膀胱鏡検査』

全身麻酔をかけて、尿道口から膀胱鏡を挿入し、膀胱内の様子を確認します。膀胱粘膜の荒れ具合や結石などを直接見て探せますが、麻酔下で行うため、一般病院ではそこまでやらないこと多いです。

【治療法について】

尿路感染症の診断は状況に応じて3パターンあります。

①原因疾患のない尿路感染症
②原因疾患がある尿路感染症
③再発を繰り返す尿路感染症

これら3つに分けて、解説していきます。

『①原因疾患がない尿路感染症』

これを『単純性急性LUTI』といいます。ルーティン検査を終え、単純性急性LUTIを疑う所見を得られた場合は膀胱穿刺で採尿し、尿の細菌培養検査に出します。

検査結果が出るまで数日かかるので、その間は広域スペクトルの抗菌薬を使用して結果を待ちます。結果を得ると原因菌に最適な抗菌薬に切り替えます。 治療期間は約10~14日間です。

『②原因疾患がある尿路感染症』

これを『複合性急性LUTI』といいます。①同様に抗菌薬の治療を進めつつ、原因疾患を徹底的に探っていく必要があります。治療期間は約4~6週間です。

・腫瘍
・尿路異常
・外傷
・尿石症
・糖尿病
・副腎皮質機能亢進症
・抗がん剤(特にシクロフォスファミド)

など考えられる原因を一つ一つ潰していきます。

『③再発を繰り返す尿路感染症』

これを『再発性LUTI』といいます。再発性LUTIでは宿主(動物)側に問題があって、防御機構がうまく機能していないことが原因であるとされています。

「抗菌薬の投与をやめると再発する」を繰り返してしまうため、長期的に抗菌薬投与が必要になります。抗菌薬の低投与量療法を維持療法として行います。ただ、抗菌薬の長期服用は耐性菌の発生などリスクが伴うため、十分注意が必要です。

【最後に】

今回は『下部尿路感染症』の診断方法と治療法について紹介しました。この病気は血液検査や画像検査で異常が見られない場合もあります。細菌培養検査によって、細菌の存在と増殖を確認することで、診断をつけることができます。

【本記事の参考書籍】

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 314-317p

 

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『下部尿路感染症①~原因と症状~』

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『原因疾患となる病気』

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