オタ福の語り部屋

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【原発性アルドステロン症(Conn症候群)】猫の副腎腫瘍と言えばコレ

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【はじめに】

今回は『原発性アルドステロン症(Conn症候群)』についてです。この病気は猫の副腎腫瘍で認められる病気で、副腎で産生されるアルドステロンというホルモンが副腎腫瘍によって過剰に分泌されることで起こる疾患です。犬で似たような病気に『副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)』と呼ばれるものがあります。クッシング症候群ほど、発生率が多くなく、マイナーな病気でわかっていることや十分に信頼できるデータ数が集まっていないですが、今回はできるだけ調べて話を広げられたらいいなと思います。

 

【目次】

 

【アルドステロン産生性副腎皮質腫瘍とは】

どの細胞がどのホルモンを産生するか
副腎では多くのホルモンが産生されています。どのホルモンがどの細胞から産生されるかは決まっているため、どの細胞が腫瘍化するかによって過剰産生されるホルモンが決まります。

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犬の副腎腫瘍では
犬の副腎腫瘍では犬を飼われている方なら一度は聞いたことがあるかと思いますが、『クッシング症候群』という病気が多いです。このクッシング症候群は別名:副腎皮質機能亢進症と呼ばれる病気で、副腎の糖質コルチコイドを産生している細胞が腫瘍化することによって引き起こされます。

猫の副腎腫瘍では
猫では糖質コルチコイドを産生する副腎皮質機能亢進症の発生はあまり見られません。代わりにアルドステロンを産生している細胞が腫瘍化した、『アルドステロン産生性副腎腫瘍』が多いです。
「多い」と言っては語弊があるかもしれません。猫での副腎腫瘍の発生自体が稀なので、そもそも認知されていることが少ないです。
しかし、猫という動物種で副腎腫瘍といえば、アルドステロン産生性副腎腫瘍が最も多い主要なのです。

こう言ったアルドステロン産生性副腎腫瘍で起こる病気のことを『原発性アルドステロン症(別名:Conn症候群)』と言います。

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【臨床徴候について】

『好発年齢』

好発年齢は中年齢~高年齢で、発生年齢中央値は13歳(5~20歳で報告あり)。

Affected cats present at a median age of 13 years (range 5-20 years). 引用文献:Primary hyperaldosteronism: expanding the diagnostic net.

 

『症状』

最もよく見られるのが、低カリウム血症に伴う『筋肉の虚弱』です。力が弱くなったり、あまり動きたがらない場合は低カリウム血症が起こっているかもしれません。

次に多く見られるのが、『動脈高血圧症』です。眼球の充血などが見られる場合、この症状が起っている可能性があります。

 

【診断方法】

『まずは血液検査と症状から』

血液検査で低カリウム血症が認められることが多いです。一方で、動脈高血圧症が認められることはあまりありません。
本疾患を患っている猫では腎疾患も併発していることもあります。 

『確定診断を行うには』

一番理想は直で原因ホルモンを測ること
原発性アルドステロン症を確定するためには血液中のアルドステロン値が上昇していることを確認できれば一番楽なのですが、レニン・アルドステロン比や血漿レニン活性を調べることなしに血漿アルドステロン値を確定診断に使用することは難しいです。
そして、その血漿レニン活性の測定をするのは容易ではありません。

フルドロコルチゾン抑制試験
経口的にフルドロコルチゾン(0.05mg/kg)を投与し、尿中に排泄されたアルドステロンとクレアチニンの比(通称:尿中アルドステロン/クレアチニン比)を測定する試験です。健康な猫ではこの比がフルドロコルチゾン服用後に減少するのですが、高アルドステロン血症の猫では減少が認められないようです。
そのため診断に使えるのではないかを考えられています。まだまだ試験的な段階みたいです。

Administration of fludrocortisone resulted in a significant decrease in the UACR (median, 78%; range, 44-97%; P < .001) in healthy cats. In the cat with an aldosterone-producing adrenocortical carcinoma, the basal UACR and the UACR after fludrocortisone administration were 32 x 10(-9) and 36 x 10(-9), respectively. (中略) Using the UACR for an oral fludrocortisone suppression test may be useful for the diagnosis of primary hyperaldosteronism in cats. 引用文献:Urinary aldosterone to creatinine ratio in cats before and after suppression with salt or fludrocortisone acetate.

『超音波検査』

超音波検査によって副腎の左右の大きさを調べられます。両側性肥大、片側性肥大の両方が認められています。これ自体がアルドステロン産生性副腎腫瘍の確定診断にはなりません。

超音波検査では腫瘍栓の存在や遠隔転移の確認なども行うことができます。

【治療法】

『副腎摘出』

犬の副腎腫瘍による副腎皮質機能亢進症では成功率は良いとは言えない結果でしたが、猫の副腎腫瘍で多い、アルドステロン症における副腎摘出手術は良好な成績が出ているようです。ただ、症例数が少ないので本当に「良い」と言い切れないも事実ですが。
腺腫であろうと腺癌であろうと大静脈血栓症を併発していようと、成功率は良いらしいです。

『内科的な薬物療法では』

カリウムのサプリメントや降圧剤、アルドステロンへの拮抗作用のあるスピロノラクトンを使用することが多いです。

【最後に】

今回は猫の副腎腫瘍として『原発性アルドステロン症(Conn症候群)』について解説してみました。猫の病気として認知されていることが少なく、あんまりデータの無い中の執筆だったので、あまり言い切れるところがありませんでした。ただ、低カリウム血症や高血圧などがあり、副腎が肥大している場合に他に考えられる疾患が無いと行き詰まった時にはこの病気を疑ってみるのも良いかもしれません。

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Withrow ; David M. Vail ; Rodney L. Page : Withrow&MacEwens SMALL ANIMAL Clinical Oncology. 5th ed.,  ELSEVIER, 2013, 512p

 

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