オタ福の語り部屋

獣医学を追求する。その先に見えるものは…

【先天性門脈体循環シャント①~概要・病因~】~"すきま時間"の獣医学~

スポンサーリンク

f:id:otahukutan:20191011104759p:plain

【はじめに】

今回は『先天性門脈体循環シャント』の概要と病因についてです。この病気は肝臓を経由すべき血管が肝臓をすっ飛ばして別の血管と繋がってしまう病気です。門脈とは何者なのか、そして肝臓の大切さを知ってもらえる疾患です。

【先天性門脈体循環シャント①~概要・病因~】
【先天性門脈体循環シャント②~症状・診断方法~】
【先天性門脈体循環シャント③~治療法~】

【目次】

 

【先天性門脈シャントについて】

『概要』

どんな病気?
門脈体循環シャント(通称:PSS)は腸管と肝臓を繋ぐ門脈と肝臓と心臓を繋ぐ大静脈が異常な短絡血管で連絡する疾患です。

門脈とは
門脈とは解剖学的には『2つの毛細血管網を繋ぐ血管』と定義されています。通常の血管は『動脈→毛細血管→静脈』という流れで心臓へ戻ってくるのですが、門脈は『動脈→毛細血管→門脈→毛細血管→静脈』とワンクッション挟むための血管の呼称です。

PSSの分類
まずPSSは生まれつきの奇形として起こる『先天性』と肝線維症や門脈圧亢進症などで起こる『後天性』の二種類に分類されます。

・先天性PSS
・後天性PSS

さらに先天性PSSはシャントができる場所によって2つに分類できます。
肝臓内にシャントを作る場合を『肝内性』と呼び、肝臓外にシャントを作る場合を『肝外性』と呼びます。

・肝内性シャント→大型犬に多い
・肝外性シャント→小型犬に多い

肝内性シャントについて
肝内性は大型犬(特にコリー)に発生が多いですが、小型犬で見られる場合があります。肝臓のどの部位に走行するかで『左肝区域』、『中央肝区域』、『右肝区域』に分類されます。肝内性シャントは胎子期の静脈管の遺残であるため、左肝区域での発生が多いとされています。

肝外性シャントについて
肝外性は小型犬(特にヨークシャーテリア)に発生が多いです。肝外性の場合、門脈をはじめ右胃静脈や脾静脈などの血管から肝臓を経由せず、直接大静脈や奇静脈に連絡します。

『病因:この病気の何が悪いのか』

PSSでは何が問題になるのでしょうか?それには肝臓の『解毒作用』が大きく関与しています。

正常時の肝臓では
通常、食べ物は胃や小腸で吸収され、門脈を通って肝臓へ運ばれてきます。この時に血液には体に必要な栄養分の他にアンモニアなどのいわゆる『消化管内毒素』というものも混入しています。

肝臓では門脈より送られてきた血液から体に必要な蛋白を合成する一方で、消化管内毒素を分解し、尿や胆管から排泄できるような形に構造を変換させています。

こういった肝臓の活躍により、栄養を摂取した際、必要なものはエネルギーとなり、不要なものは尿排泄物として体外に出されています。

PSSの肝臓では
PSSでは門脈から肝臓を経由せず、直接静脈に連絡しています。そのため、毒素を含んだ門脈血が解毒されないまま、心臓へと帰り、身体中を循環します。

さらに、肝臓の栄養血管は門脈が大半を占めており門脈からの血液供給が乏しくなると肝臓は発育不良を起こします。その結果、『小肝症』や『肝不全』などが起こり、肝機能の低下を助長します。

・門脈血の体循環への直接流入
・血流量低下による肝機能の低下

これら2つのダブルパンチによって、体内には毒素が充満し、『肝性脳症』という病気を引き起こします。

肝性脳症
この病気は別記事として用意すべき重要な疾患ですが、簡単に説明すると、肝臓疾患によって起こる中枢神経系疾患をいいます。PSSによる解毒不足が原因でアンモニアなどの毒素が体内に蓄積することで起こります。

【最後に】

今回は『先天性門脈体循環シャント』の概要と病因について紹介しました。PSSの悪さの原因から肝臓がいかに大切かを改めて認識させられる疾患ですね。次回は症状や診断方法について解説します。

【本記事の参考書籍】

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 259-262p

 

【関連記事】

『一緒に考えるべき疾患』

www.otahuku8.jp

www.otahuku8.jp

www.otahuku8.jp

www.otahuku8.jp

『先天性門脈体循環シャント①~③』

www.otahuku8.jp

www.otahuku8.jp

www.otahuku8.jp