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【蛋白漏出性腸症(PLE)】~"すきま時間"の獣医学~

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【はじめに】

今回は『蛋白漏出性腸症(PLE)』についてです。よく聞く蛋白漏出性腸症ですね。この病気を患っているワンちゃん、結構ツイッターなどでも見かけます。この病気を調べているとまだ解明されていない事があって、めちゃくちゃ奥が深いように感じます。でも今回は"すき獣シリーズ"なので、そんな蛋白漏出性腸症について、簡略化してご紹介します。

 

【目次】

 

 【蛋白漏出性腸症について】

『概要と症状』

蛋白漏出性腸症とは
蛋白漏出性腸症とは『血漿蛋白質が腸粘膜から腸管腔へ異常に漏出することによって起こる症候群』を言います。

要は血液中の蛋白が腸へ出て行ってしまう病気です。

症状
低蛋白血症に伴って、腹水、胸水、浮腫が見られます。

『原因』

蛋白漏出性腸症の原因は主に2つの原因があります。

①リンパ管が圧迫される
②リンパ管が閉塞する

これら2つの理由があります。

①リンパ管が圧迫される場合
・重度のIBD
・腸管型リンパ腫
など炎症や腫瘍で、外部からグッと押されるケースがあります。

②リンパ管が閉塞する場合
リンパ管が詰まってしまい、行き場の無くなったリンパ液が溜まってします『リンパ管拡張症』という病気でも蛋白漏出性腸症は起こります。

『腸リンパ管拡張症について』

「詰まるのが原因」

何らかの原因でリンパ管が詰まってしまうことが原因で起こる疾患で、そのほとんどは原因不明であることが多いです。

リンパ管が詰まると、腸乳び管が拡張し、破裂します。そして腸粘膜下組織を通り抜け、腸の管腔側へと漏れ出してしまいます。

通常は再び吸収することで対応しますが、漏出量の増加に伴い低蛋白血症が起こってしまいます。

「症状」

症状は
・小腸性下痢
・軟便
・腹水
を中心に、浮腫や体重減少、胸水など低蛋白血症が原因で起こる症状というのが見られます。
参考図書によると、下痢は必ずしも見られるわけではないという記載がありました。

『診断方法』

一番のキーポイントは
一番のキーポイントは蛋白漏出性腸症とその他の疾患を鑑別するということです。蛋白漏出性腸症は低Alb血症が見られます。同じように低Alb血症が見られる疾患として、

・蛋白漏出性腎症
・飢餓
・肝機能の低下

などが挙げられます。
こういった類似症状を示す疾患を除外していきましょう。

血液検査
先ほどお話ししたように『低蛋白血症』が見られます。そして、そのほかにリンパ球減少症、低コレステロール血症、低カルシウム血症などが見られます。ちなみに血清総胆汁酸を測定しておくと、肝機能評価ができます。

尿検査
尿検査は『尿蛋白/クレアチニン比』を調べておくと、蛋白漏出性腎症を除外することができます。

体腔貯留液の検査
低蛋白血症を確認する1つの手がかりとして、腹水や胸水を確認し、『漏出液』であることを確認できれば診断につながります。実際そうそううまく分類できるものではないですが。

超音波検査
腸リンパ管拡張症における診断には非常に有用性が高く、粘膜層に高エコー源性の筋が見えるのが特徴です。腸管型リンパ腫では腫瘍病変に特徴的な『5層構造の消失』が見られることもあります。

確定診断
確定診断を行うには『内視鏡による生検』が必要になります。内視鏡で腸内を観察すると『白色粟粒状』に見られます。これは拡張したリンパ管が肉眼で見られるものです。

『治療法』

栄養療法
蛋白漏出性腸症を示している場合、脂質の多いフードはリンパ管の灌流を増加させてしまうので、『超低脂肪食』による給餌でリンパ管への刺激を避けます。

内科療法
蛋白漏出性腸症では炎症が原因で起こっていることが多いので、プレドニゾロンなどのコルチコステロイドやシクロスポリンなどの免疫抑制剤を使用します。

輸液と利尿薬
腹水や胸水の貯留を解除するために利尿薬を投与する場合があります。利尿薬を投与するときは電解質も一緒に尿中に排泄されてしまうので、輸液によって電解質を補充します。

【最後に】

今回は『蛋白漏出性腸症』について解説しました。蛋白漏出性腸症は血漿蛋白が腸へ出て行ってしまう病気です。まずは蛋白減少が起こる疾患を検査によって鑑別していき、低脂肪食と免疫を抑える薬を中心に治療を進めていきます。

【本記事の参考書籍】

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 226-228p

 

【関連記事】

『IBDについて』

www.otahuku8.jp

『腸管型リンパ腫について』

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『低蛋白血症について』

www.otahuku8.jp

『免疫抑制剤について』

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