オタ福の語り部屋

獣医学を追求する。その先に見えるものは…

【ウイルス性肺炎】二次感染にはご用心、ウイルス性肺炎のお話(+おまけでインフルエンザの話も)

スポンサーリンク

f:id:otahukutan:20191010222426p:plain

【はじめに】

今回は犬猫でおこりやすい4つの肺炎の1つ『ウイルス性肺炎』について解説していきます。ウイルス性肺炎は細菌性肺炎と双璧をなす肺炎で、流行に乗って感染が拡がる感染性の疾患です。

犬猫で多い4つの肺炎
【細菌性肺炎】
【ウイルス性肺炎】
【アレルギー性肺炎(好酸球性気管支肺症)】 
【誤嚥性肺炎】

 

【目次】

 

【どんなウイルスが感染するのか】

肺炎を引き起こすウイルスにはインフルエンザウイルスのように呼吸器系を標的にするウイルスと犬ジステンパーウイルスや猫伝染性腹膜炎のように全身疾患の一部として肺炎が現れるものとがあります。

犬猫で肺炎を引き起こするとされているウイルスは以下のものがあります。

犬猫で肺炎を起こすウイルス
・犬ジステンパーウイルス
・犬ヘルペスウイルス
・アデノウイルス1型(犬伝染性肝炎)
・アデノウイルス2型(伝染性喉頭気管炎)
・犬パラインフルエンザウイルス
・犬インフルエンザウイルス(H3N8とH3N2)
・犬呼吸器コロナウイルス
・猫カリシウイルス
・猫ヘルペスウイルス
・猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIP)
・猫免疫不全ウイルス
・猫白血病ウイルス
・鳥インフルエンザ(稀)
※FIVとFeLVは免疫不全に伴う二次性の肺炎

感染が多いウイルスを赤字で記しています。

 

【症状】

ウイルス性肺炎の症状としては細菌性肺炎の時と類似しています。
・慢性的な咳
・努力性呼吸
・呼吸数の増加
・発熱
・頻脈
・粘液性の鼻汁
・食欲不振
などが認められます。

 

【診断方法】

身体検査
体温の上昇が確認できます。

血液検査
感染初期は単球やリンパ球の増加が認められます。細菌の二次感染が起こっていれば、好中球の増加が認められます。そのほかにも細菌感染を起こしていると炎症マーカーとして知られる犬ではCRP、猫ではSAAの値が上昇していることがあります。

確定診断を行うには
ウイルス性肺炎は細菌性肺炎のように気道洗浄液の細胞診で診断することができません。きちんと診断しようとするなら、PCR検査や培養検査、ウイルスの抗体価の測定が必要になります。

f:id:otahukutan:20191010220937p:plain



【二次性細菌性肺炎に注意】

肺炎が重篤化したという場合、ウイルスの単独感染というよりは細菌の二次感染が成立してしまっていることがほとんどです。ウイルス感染の場合、呼吸上皮の損傷が起こるだけなので、肺炎が重篤化することはあまりありません。呼吸上皮が破壊されても、体がすぐにウイルスに対する抗体を産生し、ウイルスの除去と呼吸上皮の再生を行うからです。

しかし、ウイルス感染の途中で細菌感染が起こってしまうと、強い炎症反応が見られるため、呼吸上皮の再生が遅れてしまいます。呼吸上皮の再生が遅れると、ウイルスや細菌が増殖する機会を与えることとなるので、結果として肺炎が長引き重篤化してしまうのです。

f:id:otahukutan:20191010222252p:plain

【ウイルス性肺炎の治療】

ウイルス性肺炎の治療は感染しているウイルスを特異的に攻撃する治療法が選ばれる場合もありますが、効果的な治療は少なく実際に行われているのは対症療法を中心とした補助的な治療です。

二次性の細菌感染が成立していた場合は、細菌性肺炎に対する治療法を行います。

【おまけ:インフルエンザウイルスについて】

『インフルエンザウイルス流行の始まり』

インフエンザウイルスが犬や猫に感染するということはつい最近まで知られていませんでした。その発見は2004年のグレイハウンドのドッグレース期間中に起こりました。レース犬の犬舎内で、インフルエンザウイルスH3N8型の感染が起こりました。

その時以来、インフルエンザA型ウイルスの感染は散発的に発生が認められるようになりました。

We report an outbreak of respiratory disease by influenza virus infection in Iowa racing greyhounds after influenza outbreaks in Florida in 2004.引用文献:Influenza Virus Infection in Racing Greyhounds

 

『インフルエンザウイルスH3N2とH3N8』

起源となる動物種は犬ではない
H3N2インフルエンザは元来、鶏での発症が確認されていたインフルエンザウイルスで、H3N8インフルエンザはその起源が馬にあります。インフルエンザウイルスではこうした動物種を超えての感染が認められる場合がしばしばあります。

感染症の経過について
これら二つのウイルスは共に、犬間での強い感染力が報告されており、主な症状としては発咳、発熱、脱力などが挙げられます。疾患率は高いものの、致死的なまでに悪化するケースは稀なようです。

不運にも命を落としてしまうケースでは二次性の細菌性肺炎が関与していることがほとんどです。

『人間に感染するの可能性は?』

動物の病気が人間に感染したり、人間の病気が動物に感染したりすること病気を『人獣共通感染症(Zoonosis)』と言います。

今のところH3N8インフルエンザウイルスが人獣共通感染症である可能性は低いようです。しかし、インフルエンザウイルスはいつ『遺伝子再集合』を起こし、新しい抗原亜型を作るかはわかりません。インフルエンザを発症している犬で犬の病気と油断せずに扱うことが大切です。

『インフルエンザの治療法』

タミフルを使う
インフルエンザの治療法としては人間でよく使用されているタミフルが犬で利用されることがあります。しかし効果についてはきちんとして実験が行われていないため、不明なままです。あまり期待できないみたいです。

『ワクチンについて』

日本ではおそらく使用されていないかもしれませんが、インフルエンザの報告がある海外の参考図書によると、犬用のインフルエンザ不活化ワクチンを使用することができるようです。ちなみに、H3N8とH3N2は別々のワクチンで二本打たないとダメなようです。 

『猫のインフルエンザについて』

猫のインフルエンザは犬に比べると発症頻度は少ないです。猫で感染が確認されているのはインフルエンザH5N1というタイプのウイルスで、鶏由来のインフルエンザウイルスです。こちらのウイルスも猫同士で感染が成立する感染症です。

【最後に】

今回は『ウイルス性肺炎』についてお話をしていきました。ウイルス性肺炎は呼吸上皮にウイルスが付着し侵入することで感染が成立します。ウイルス性肺炎で怖いのは二次性の細菌性肺炎の発生が起こる可能性があるということです。ウイルス性肺炎で命を落とすケースでは大半がこの細菌性肺炎を併発させています。

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Ettinger ; Edward C. Feldman ; Etienne Cote : Textbook of veterinary internal medicine. 8th ed., ELSEVIER, 2017, 1116-1117p

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 142p

 

【関連記事】

『犬猫で多い4種類の肺炎』

細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、アレルギー性肺炎(好酸球性気管支肺症)、誤嚥性肺炎については↓

www.otahuku8.jp

『肺がん』

www.otahuku8.jp