オタ福の語り部屋

獣医学を追求する。その先に見えるものは…

火傷の分類について

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【はじめに】

今回は『動物の火傷の分類』についてです。
火傷には治療を必要としない軽度なものから、生死を彷徨うような重篤なものまで様々です。
重症かそうでないかを判断するためには正しい分類が必要になります。今回はちょっと病気とは話が逸れますが、火傷の分類についてお話ししていきます。

 

【目次】

 

【動物の火傷治療は人の応用?】

犬や猫などが大火傷を負うことは人間と比べて稀です。
人ではかつて戦時中に急速に火傷の治療法を発展させ、さらに現代でも火傷で病院に運ばれくる人が多いらしく、人間の火傷治療のデータはかなり豊富です。
その豊富なデータから作られた火傷への対処は犬や猫でも適応できるとされており、今日の獣医学では人医療の治療法を適応させています。

【火傷にも種類がある】

火傷とは組織(皮膚や臓器のこと)のキャパシティを超えた威力のエネルギーが加わった時に生じる組織傷害です。加えられるエネルギーによって火傷には分類があります。

『火傷の分類』

熱傷(Thermal burns)
細胞を破壊できるほどの高温または低温による火傷
真夏の散歩でマンホールを踏んだ犬や猫で見られます。

化学熱傷(Chemical burns)
組織壊死を引き起こす化学物質による火傷
抗がん剤の血管外漏出などで見られます。

電撃熱傷(Electrical burns)
組織壊死を引き起こせるほどの電流が患者の身体を通過することによる火傷
家にある延長コードを噛んで遊んでしまった子猫などで多いです。

放射線熱傷(Radiation burns)
急性に細胞壊死を引き起こすような電離放射線が照射されることによる火傷
放射線治療や強い紫外線を浴びた時によく見られる火傷です。

 

【熱傷について】

『熱傷の原因を考える』

熱傷は原因によってさらに細かく分類できます
熱傷の分類
①火による火傷
②熱湯や熱風による火傷
③高熱なものに触れたことによる火傷

『熱傷を深さによって分類する』

火傷の重症度は2つの基準によって分類されます。その1つに深さがあります。この項では火傷を負った深さによって重症度を線引きしたお話をしたいと思います。
深さによる重症度の分類は5つあります。

レベル1:表皮最表面の火傷
熱傷は表皮に限局し、外見上は紅斑が見られます。
真皮へは影響がないので、傷口がむき出すようなこともなく、傷跡も残りません。
しかし、表皮表面の侵害受容器が刺激されるので、火傷しているときは痛みは感じています。

レベル2:表皮全層の火傷
表皮全層が火傷により壊死し、真皮にまで及んでいる火傷です。傷口では滲出液が溢れたり、水ぶくれ(水疱)を形成したりします。人間では水ぶくれはよく見られますが犬や猫ではあまり見られません。これは皮膚の組織構造の違いによるものと考えられています。

レベル3:真皮以深の火傷
真皮を完全に通過し、皮下組織にまで火傷が波及している状態を指します。人によってはここからさらに2つの分類を設けています。

レベル4:筋膜・筋肉の火傷
皮下組織のさらに深部にある筋膜や筋肉にまで火傷が波及している状態を指します。

レベル5:骨の火傷
筋肉のさらに奥、体の最深部にある骨にまで火傷が波及している状態を指します。

分類はこのように5つに分かれます。
この分類を「軽傷」、「重傷」の2つで言うなら
・レベル2までが軽傷
・レベル3以降が重傷
となります。その理由としては真皮の存在です。真皮を完全に失っているのとそうでないのとで治療法と予後が大きく異なるからです。

『どの程度の熱で細胞は壊れるのか』

火傷火傷と言われてもどの程度の温度で細胞はダメージを受けるのでしょうか?
実は細胞は非常に熱に弱く、40~44度ぐらいで不具合が生じ始めます。
40~44℃
細胞膜上にあるナトリウムポンプに障害が出始めます

60℃に1秒
表皮は壊死します

皮膚温が70℃に1秒
レベル3ほどの火傷を負います。
この程度の火傷します。細胞はとても熱に弱いのです。

余談ですが、この記事を執筆するために調べている過程で見つけたのですが、このデータは1947年ごろに発表されており、やはり火傷という分野は戦争中の火傷が基盤として発展してきたんだなと実感しました。

『熱傷を表面積によって分類する』

火傷の重症度を「体表面積の何%が火傷したか」で分類する方法で、「%TBSA」と表記されます。

『ウォレスの9の法則』について
体表面積を大まかに把握する方法として『ウォレスの9の法則』というものがあります。これは主に人で使用されている方法なのですが、動物でも適応は可能です。
この法則では各部位の表面積を百分率で表しています。
・頭部+頸部=9%
・前肢(片方)=9%
・後肢(片方)=18%
・胸部(前)+胸部(後)=9+9=18%
・腹部(前)+腹部(後)=9+9=18%
・陰部=1%
(合計)
=頭頸部+両前肢+両後肢+胸部+腹部+陰部
=9%+9%×2+18%×2+18%+18%+1%
=100%

このようにして火傷した部位の大まかな割合を計算します。

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【最後に】

今回は熱傷を中心に火傷の分類についてお話ししました。火傷の分類には原因によって4つに分けられます。
そして、一番多い熱傷については熱傷が波及した深さと面積によってさらに分類されます。またいつか火傷についてより病気に近いところへと話を展開していけたらと思います。

 

【本記事の参考書籍】

Spencer A. Johnston ; Karen M. Tobias : veterinary surgery small animal. 2nd ed., ELSEVIER, 2017, 1495-1496p