オタ福の語り部屋

獣医学を追求する。その先に見えるものは…

【僧帽弁閉鎖不全症の診断方法】~"すきま時間"の獣医学~

スポンサーリンク

f:id:otahukutan:20191007122431p:plain

【はじめに】

今回は『僧帽弁閉鎖不全症の診断方法』についてです。院内での検査方法に関するトピックになります。今回は完全にオタ福の勉強まとめになりますが、またいつか症状や治療法などのお話ができればと思います。しばし、お付き合い下さい。

 

【目次】

 

【僧帽弁閉鎖不全症とは】

『僧帽弁とは』

心臓には血液の逆流を防ぐために、大きく分けて4つの弁がついています。

心臓の弁
・僧帽弁
・三尖弁
・大動脈弁
・肺動脈弁

これら4つの弁のうち、左心室から左心房への逆流を防ぐためにあるのが、今回のテーマとなる『僧帽弁』です。

 

『僧帽弁閉鎖不全症』

僧帽弁閉鎖不全症とは僧帽弁が粘液水腫様変性を起こし、弁の逸脱が起こってしまう病気を主に指します。そのほかにも原因はありますが、ここでは割愛。

もう少し噛み砕いて言うと、「弁が劣化してバカになる」といった感じです。要は弁が弁として機能できなくなったということです。

【診断方法】

『身体検査』

心臓の聴診
病変初期では逆流は起こっていないため、症状は現れません。病変が進行し、弁が壊れて、逆流が起こると異変が出てきます。

心室が収縮している時に心房への逆流が起こるので、Ⅰ音~Ⅱ音の間の全収縮期雑音が聞こえるようになります。

肺の聴診
左心房への逆流が持続すると肺のうっ血が起こります。肺のうっ血に伴って、呼吸音が聞こえにくくなります。

『心電図』

犬で多い弁の粘液腫様変性による僧帽弁閉鎖不全症で心電図に異常が見られることはあまり無いようです。
左房拡大によるP波の延長は見られることがあります。

『レントゲン検査』

必ず確認すべきポイントは2つ
・左房・左心の拡大
・肺のうっ血・水腫
です。

逆流が持続すると、左心房は拡大し、左心耳が突出してきます。VD像では心臓の1-3時の方向への拡大が確認でき、ラテラル像では左心耳が気管分岐部を押し上げるような像が見られます。肺静脈が拡張している像が見られることもあります。

『心エコー検査』

心エコー検査とは心臓に超音波を当てて、心臓の動きや形状をリアルタイムで確認する検査方法です。

房室弁の変化
粘液腫様変性が起こると弁は厚みが増してきます。弁は通常、収縮期の弁閉鎖位置が心室側にあるはずなのですが、弁の変性が進行してくると、徐々に心房側へと閉鎖位置が移動してきます。

弁輪ライン(心房と心室の境界)を越えて、左心房側へ弁が動くようになると、重度の閉鎖不全であり、『腱索断裂』が疑われます。

逆流を確認する
超音波検査ではカラードプラ法といって、血液の流れる方向を色で表現する機能があります。カラードプラではプローブ(超音波の端子)へ近づいてくる血流を赤色で、遠ざかっていく血流を青色で表現しています。通常、左心房から左心室へ血液は流れているので、1色しか見えません。しかし、逆流が起こると、血流は乱流を起こすので、赤と青がごちゃ混ぜになった『モザイク信号』というものが見えるようになります。

【最後に】

今回は『僧帽弁閉鎖不全症の診断方法』を紹介しました。僧帽弁閉鎖不全症は心疾患の中でも1,2位を争うほど、頻発する疾患です。今回は検査についてお話ししましたが、是非また別の角度からこの病気を紹介していければ良いなと思います。

【本記事の参考書籍】

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 78-84p