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【猫の肝リピドーシス②~治療法~】~"すきま時間"の獣医学~

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【はじめに】

今回は『猫の肝リピドーシス』の治療法についてです。この病気は前回の記事でお話しした通り、太った猫が急に食欲不振に陥ることで起こる病気です。全身状態を整え、必要なカロリーを摂取してもらうことが大切です。

猫の肝リピドーシス①~原因・症状・診断~】~"すきま時間"の獣医学~

【猫の肝リピドーシス②~治療法~】~"すきま時間"の獣医学~

 

【目次】

 

【肝リピドーシスの治療法】

『行うべき治療とは』

肝リピドーシスの子には
・栄養補給
・電解質の補正
・脱水の補正
を中心に行います。

まず最初にやる初期治療として輸液による『脱水の補正』と『電解質の是正』を行います。

『栄養療法』

強制給餌という選択
肝リピドーシスを呈している猫では食欲が低下しているので、多くの場合が強制給餌となります。強制給餌を極端に嫌がる場合はチューブフィーディングも検討します。

胃チューブ(PEG)
食欲不振や嘔吐が酷い場合は胃チューブを設置し、それによって流動食を直接胃へ流し込むという方法が行われます。

設置自体は全身麻酔が必要となりますが、内視鏡を用いて行うため侵襲度自体はそこまで高くはありません。さらに、胃チューブは割と太いチューブを設置することができるので、一度にしっかりとご飯を与えることができることもメリットとなります。

胃チューブの場合、摂食時に痛みを伴うことがないので、猫に痛みによるストレスを与えることなく、回復も早いと言われています。

チューブフィーディングについて詳しくはこちらを参考にしてみて下さい。僕が書いた記事です。

www.withdog.site

 

どんな食事をあげれば良いか
セオリー通りで行くと、肝リピドーシスの子には『全摂取カロリーの20%が蛋白質で構成された食事』を与えなければいけないとされています。つまり、蛋白質をしっかり摂りましょうということです。

しかし、肝性脳症といって、肝機能が重度に低下した際に起こる神経疾患を起こしている場合は原因が蛋白質から分解されるアンモニアにあるので、蛋白質の摂りすぎは良くありません。

『薬物療法』

嘔吐を抑える
肝リピドーシスによって嘔吐が繰り返されていると、電解質の異常や脱水が起こるため良くありません。

そこで制吐剤として
・メトクロプラミド
・プロクロルペラジン
・オンダンセトロン
・マロピタント
などが使用されます。

高アンモニア血症を改善したい
肝性脳症や高アンモニア血症が認められる場合はラクツロースメロトニダゾールを用いて、アンモニア吸収を抑えたり、アンモニア産生性腸内細菌を減らしたりします。

抗菌薬の使用
抗菌薬は肝臓で変化を受けたり排泄されるものは避けます。
・アンピシリン
・アモキシシリン
・セファレキシン
・セファロチン
・メトロニダゾール
などは安全に使用できます。

『投与禁忌な薬を紹介』

肝リピドーシスを起こしている場合にはあまり投与するべきではない薬がいくつかあります。

シメチジン
H2ブロッカーであるシメチジンは他の薬の薬物代謝に変化を与え、血中濃度が異常に高くなってしまうことがあるので、使用は避けます。

蛋白同化ステロイド
胆汁鬱滞作用があるので避けます。

グルココルチコイド
脂肪分解による肝臓への脂肪酸動員を促すので避けます。

ベンゾジアゼピン
ベンゾジアゼピンは肝性脳症を悪化させるとされており、使用は避けます。

『予後について』

肝リピドーシスは早期治療を行うことで60%の猫が回復すると言われています。
そのほかに予後良好因子として
・若齢
・血清K濃度が高い
・Hctが高い
・特発性(←二次性と比較して)
などが挙げられます。

【最後に】

今回は『肝リピドーシス』の治療法についてお話ししました。この病気では食欲不振に陥っている猫にどうにか食べてもらうこと、そして、肝性脳症が続発する可能性をなるべく下げることが治療となります。回復する確率も60%と割りかし高く、きちんと治療すれば改善が期待できる疾患です。

【本記事の参考書籍】

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2, 文英堂出版, 2014, 271-274p

 

【関連記事】

『肝リピドーシス』

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『IBDについて』

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『急性膵炎について』

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『甲状腺機能亢進症について』

 

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『慢性腎臓病について』

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