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【猫の肝リピドーシス①~原因・症状・診断~】~"すきま時間"の獣医学~

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【はじめに】

今回は『猫の肝リピドーシス』についてです。この病気は肝臓に脂肪が蓄積してしまう病気で、太った猫ちゃんを飼っている飼い主さんは必見の疾患です。

猫の肝リピドーシス①~原因・症状・診断~】~"すきま時間"の獣医学~

【猫の肝リピドーシス②~治療法~】~"すきま時間"の獣医学~

 

【目次】

 

【肝リピドーシスについて】

『概要』

肝リピドーシスとは
『様々な原因によって、脂質代謝が障害され、肝臓に過剰な脂肪が蓄積した状態』を言い、肝内胆汁の鬱滞や肝機能障害を起こします。

どうやってなるの?
肝臓ではエネルギーとして使用する必要がない脂肪をVLDL(超低比重リポ蛋白)として脂肪組織に送ります。VLDLを合成するにはアポ蛋白質という蛋白質が必要なのですが、蛋白質が不足している状態ではVLDLを合成できず、脂肪が肝臓で蓄積されてしまうのです。

『考えられる原因について』

肝臓の50%が脂肪になる⁈
通常の肝臓には肝臓の総重量の5%ほどしか脂肪は含まれていません。しかし、肝リピドーシスの状態では50%以上の脂肪があるとされています。このように肝臓で重度に脂肪が蓄積する理由として以下のようなものが考えられます。

「肥満」

肝リピドーシスを呈しているの猫の多くは『肥満』です。肥満になると脂肪組織から脂肪酸が多く放出されます。脂肪酸の多くは肝臓で取り込まれます。健常猫ではインスリンが作用して、脂肪酸の放出を抑制しますが、肥満猫ではインスリンがうまく機能していないことが多いため、このような事態を引き起こします。

「食欲不振」

2週間以上の食欲不振や栄養失調は肝リピドーシスのリスクを急上昇させます。栄養失調状態では蓄積していた脂肪をエネルギーとして使用するため、脂肪を分解し、脂肪酸を肝臓へ送ります。脂肪酸は肝臓でトリグリセリドに変換されますが、そのトリグリセリドを志望へ送り返すためのアポ蛋白質が不足しているため、肝臓に脂肪として蓄積されてしまいます。

「原因疾患による発生」

肝リピドーシスを起こしうる疾患
・胆管炎
・肝外胆管閉塞
・糖尿病
・心筋症
・IBD(炎症性腸疾患)
・甲状腺機能亢進症
・慢性腎臓病
・重度の貧血
・その他:食欲不振が続く疾患
などが挙げられます。

病気とは異なりますが、猫の生活環境が大きく変わってしまう状況では食欲不振になることが多いので注意しましょう。

「その他」

肝リピドーシスを起こす原因として、そのほかに
・栄養素の偏り
・毒性物質の摂取
・カルニチン欠乏
・ミトコンドリアの機能異常
・ペルオキシソームの機能異常
などがあります。

 

『見られる症状』

好発リスク
肝リピドーシスを起こしやすいリスク因子として以下のようなものが挙げられます。
・雌猫(雄猫の約2倍)
・中年齢
・肥満
・急激な体重減少があった
これらリスク因子に該当する場合は注意が必要です。

具体的な症状
・食欲不振
・元気消失
・嘔吐
・下痢あるいは便秘
・黄疸
・肝腫大

 

『診断方法』

「血液検査」

貧血と赤血球の異常
Hct(ヘマトクリット)がやや低値を示し、『軽度の貧血』が確認されます。さらに血液塗抹標本では『変形赤血球』が確認されることが多く、約20%の症例では『小赤血球症』も認められます。

ALPは上昇する
ALPは上昇
していることが多く、さらに膵炎や胆管肝炎、胆管閉塞による二次性の肝リピドーシスではγ-GGTも同調して上昇していることがあります。

ALTとASTも上昇する
ALTやASTも上昇していることが多いですが、上昇の程度で言うとALPよりは劣ります。

高ビリルビン血症は多い
多くの症例で高ビリルビン血症が認められます。

血清胆汁酸濃度もヒントになる
胆汁酸は通常、『腸肝循環』に乗っているため、末梢血液中に見られることはありません。しかし、胆管が閉塞している時や門脈体循環シャントが見られる時は血清胆汁酸濃度(SBA)が上昇します。つまり、SBAの上昇は胆管閉塞を示唆しています。

「画像診断」

レントゲン検査
肝リピドーシスにおいてほとんど有益な情報は得られません。肝腫大が見られる程度です。

超音波検査
肝外胆管の閉塞や腫瘍など、他の疾患との鑑別に有用性が高いです。一般的に肝リピドーシスでは胆嚢壁の肥厚は認められないので、胆石症や胆嚢炎などとも鑑別できます。

「細胞診」

肝臓のバイオプシーを行います。
『細胞診所見の特徴』
・炎症性細胞はない
・細胞質に多量の脂肪滴を含む肝細胞
以上に注目して観察します。

【最後に】

今回は『猫の肝リピドーシス』の原因、症状、診断についてご紹介しました。この病気は肥満猫が急に食欲不振に陥った際に発生しやすく、生活環境などで影響受けやすい猫ちゃんでは注意が必要です。過度なダイエットにも注意しましょう。

【本記事の参考書籍】

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2, 文英堂出版, 2014, 271-274p

 

【関連記事】

『肝リピドーシス』

www.otahuku8.jp

『肝臓がんについて』

www.otahuku8.jp

『IBDについて』

www.otahuku8.jp

『急性膵炎について』

www.otahuku8.jp

『猫の糖尿病について』

www.otahuku8.jp

『甲状腺機能亢進症について』

 

www.otahuku8.jp

『慢性腎臓病について』

www.otahuku8.jp