【はじめに】
今回は『猫の新生子同種溶血』についてです。この病気は猫で多い病気で、母猫からもらう初乳を飲んだ新生子が重度の溶血を起こしてしまう病気です。
【目次】
【新生子同種溶血】
『犬の血液型について』
犬の血液型の分類方法
犬にも我々と同様に血液型があります。しかし、我々人間と異なる分類法によって分類されています。
人間はABO式であるのに対し、犬ではDEA式という分類法が使用されています。DEA式とは犬赤血球抗原の略で、抗原型を意味しており、DEAの種類は8種類あります。
犬には自然抗体がほとんどない
自然抗体とは自分とは異なる血液型の赤血球膜表面にある糖蛋白に対して抗原性を示す抗体をいいます。犬には自然抗体がほとんどないため、ドナーとレシピエントの双方で輸血歴がない場合は輸血によるほとんど起こりません。
しかし、血液型を無視して輸血を行うと、その後強い同種抗体が産生されてしまい、次の輸血から有害反応が出る可能性があるので、気をつけましょう。
『猫の血液型について』
猫の血液型の分類方法
猫の血液型はAB式をとっており、A型、B型、AB型の3種類の血液型があります。A型の対立遺伝子はB型のそれよりも優勢であるため、A/A型とA/B型はA型になり、B/B型でB型になります。AB型はほとんどおらずとても珍しい血液型となります。
猫の自然抗体について
猫は犬と違って、自然抗体を持っています。そのため、A型の猫にB型の猫の血液を輸血できません。
・A型の猫→低力価のB抗原に対する自然抗体
・B型の猫→高力価のA抗原に対する自然抗体
・AB型の猫→A抗原またはB抗原の自然抗体を持たない
といった具合に分けられます。
ここで注目すべきは『B型の猫が高力価の抗A抗体を持つ』ということです。B型の猫にA型猫の血液を輸血すると重度の凝集と溶血が起こってしまいます。
『新生子同種溶血について』
新生子同種溶血は母猫と子猫の血液型の違いから起こる疾患です。先ほど血液型の項でお話ししたように、B型の猫の血液には強い抗A抗体が含まれています。
初乳には抗体が含まれる
動物の初乳には種差はありますが、移行抗体といって新生子が自分で抗体を作れるようになるまでの期間、外界から守るために母親の抗体が含まれています。
新生子同種溶血とは
B型の母猫の初乳には抗A抗体が含まれているため、A型の子猫がその初乳を飲むと自分の赤血球が破壊されてしまい、重度の溶血が出現します。これを『新生子同種溶血』と言います。
治療法はある?
残念ながら、重度の溶血を起こしてしまった新生子を救うのは非常に困難です。この病気は予防することが一番重要です。
予防方法
母猫がB型、父猫がA型という掛け合わせの交配を避けることが1番の予防になります。
犬でも起こるの?
犬では自然抗体を有していることがほとんどないので、一般的には起こりません。
【最後に】
今回は『猫の新生子同種溶血』について紹介しました。猫の新生子同種溶血は重度の溶血を起こした子猫を救う手段は乏しいので、一番にB型の母猫とA型の父猫を交配させないことで予防しなければいけません。
【本記事の参考書籍】
日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 462-463,467p