オタ福の語り部屋

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【猫の特発性巨大結腸症】~"すきま時間"の獣医学~

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【はじめに】

今回は『猫の特発性巨大結腸症』についてです。この病気では便秘が頻発します。「最近、この子トイレの時間が長いな」、「もう何日もウンチが出てないな」と感じた場合、もしかするとこの病気かもしれません。

 

【目次】

 

 

【猫の特発性巨大結腸症について】

『それってどんな病気?』

特発性巨大結腸症は原因不明の病気で、結腸の運動性が低下し、便秘や食欲不振、嘔吐などが認められる疾患です。中年齢(平均5.8歳)の雄猫で発生が多く認められるというデータがあります。

『主な症状は?』

排便回数が減少する
この病気を持った猫では痛みを伴う排便の他に排便回数が減少したり、排便が全くなくなったりといった症状が数日~数週間あるいは数ヶ月続きます。

トイレ時間が長い
猫がトイレに入っている時間がいつもよりも長かったり、ただ座っているだけのような状態が続いている場合はトイレをしたくてもできない状況である事が多いです。

その他の症状
・脱水
・体重減少
・衰弱
・腹痛
・軽度~中等度の腸間膜リンパ節の腫大

 

『診断方法って?』

腹部の触診
お腹に糞便が溜まっているため、パンパンに太くなった結腸を触る事ができます。

他の疾患を除外する
便が出ない、食欲がないといった症状では腸の閉塞が一番に考えられます。腫瘍や異物によって腸が詰まっていないかをレントゲンや超音波などの画像診断を用いて診断していきます。

『原因は何なのか』

特発性巨大結腸症の原因はまだ詳しく解明されていません。ただ、結腸に永久的かつ構造的・機能的な欠損があると言われています。そのため、後述しますが薬でのコントロールは難しく、最終的には手術が必要になります。

もう少し詳細に説明すると、病気の原因は結腸の平滑筋にあると言われています。病変は下行結腸にはじまり、時間をかけて上行結腸へと波及していきます。

In vitroの研究では
結腸の切除手術を受けた猫の結腸の平滑筋を調べた研究があります。巨大結腸症の平滑筋はコントロール群と比較したところ、神経伝達物質(アセチルコリン、サブスタンスP、コレシストキニン)や脱分極の反応性が低下している事がわかりました。

『治療法』

「内科的治療」

はじめにお話ししますが、本疾患は基本的に内科療法の根治は困難であると言われています。

浣腸
まずは腸に溜まったウンチを排出してあげるために浣腸を繰り返しましょう。コレは割と有効との記載があります。

食事の管理
宿便を避けるために、水分の多く、適度に食物繊維が含まれた食事がおすすめです。

マメなトイレ掃除
腸の刺激反応性が低下しているだけでなく、単に「トイレが汚いからしたくない!」という可能性もあります。こまめなトイレ掃除を心がけましょう。

内服薬の使用
ラクツロースなどの下剤やモサプリドなどの消化管運動改善薬の使用も検討されますが、期待は低いようです。

「外科的治療」

内科的な治療で限界がきた猫では結腸亜全摘出術が検討されます。

猫に限定した話になりますが、結腸摘出術を終えた猫では一般的に予後は良好とされています。回盲弁(回腸と盲腸の境にある弁)が温存できた場合は特に良好というデータがあります。副作用として、術後数週間~数ヶ月は軟便になる子もいます。

【最後に】

今回は『猫の特発性巨大結腸症』について紹介しました。猫の巨大結腸症では便秘を始め、食欲不振や嘔吐なので、徐々に弱ってくる病気です。早めの治療で予後が良くなるという記載もあるので、早期発見のためにも日々のケアを大切にしましょう。

【本記事の参考書籍】

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 232-233p

Stephen J. Ettinger ; Edward C. Feldman ; Etienne Cote : Textbook of veterinary internal medicine. 8th ed., ELSEVIER, 2017, 1592p