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【急性膵炎の治療法】~"すきま時間"の獣医学~

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【はじめに】

今回は『急性膵炎の治療法』についてです。急性膵炎は膵臓で強い炎症が起こっており、治療が遅れると命を落とすこともある大変危険な病気です。重症例では特に慎重な治療が必要となります。

 

【目次】

 

【急性膵炎って何?】

『急性膵炎とは』

通常、膵臓で産生された消化酵素は消化管内へ出てから、消化酵素として機能を発揮します。しかし、何らかの原因で消化酵素の機能が膵臓内で活性化されてしまい、膵臓が消化液で溶けてしまう病気です。

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『どんな犬がなりやすい?』

膵炎を起こしやすい危険因子はいくつかあります。

①犬種
②年齢
③性別
④食生活
⑤併発疾患

などが関与しています。

①好発犬種
トイプードル、ヨークシャーテリア、キャバリア、コッカー・スパニエル、コリーなどが挙げられます。

②年齢
中~高年齢の動物。これは人でも一緒ですね。

③性別
性差はないですが、不妊手術済みの動物では発生率が高いと言われています。

④食生活
食べ過ぎはもちろんのこと、特に注意するのが脂質が高い食事です。おやつや人が食べるものをあげすぎないように注意しましょう。

⑤併発疾患
副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、糖尿病などの内分泌疾患を持っている子では膵炎の発症リスクがあります。

【急性膵炎の治療法】

急性膵炎の病態生理を踏まえると、輸液、制吐剤、栄養、鎮痛薬、抗炎症薬の5つの側面からアプローチしていくことが有効的であるとされています。

『輸液療法で状態を安定させる』

急性膵炎では数日間にわたり嘔吐を繰り返していたり、ショックによって低血圧に陥っている可能性が高いので、輸液療法はとても重要になります。電解質(NaやClなど)を改善したり、血液量を増やすことで血圧を維持します。

『制吐剤はマスト!』

急性膵炎では嘔吐を繰り返します。嘔吐すると胃液を多く失ってしまい、電解質のバランスが崩れてしまいます。電解質が崩れると意識混濁などの神経障害に陥る可能性があるので、予防として制吐剤で手を打っておきます。

『栄養療法は大切』

急性膵炎時は消化管が荒れていたり、食べても吐いてしまうため、ご飯を食べれていないことが多いです。急性膵炎の研究では早い段階で、ご飯を与え始めた方が予後が良いということが分かっています。

・食べれる→なるべく早い段階でご飯をあげる
・すぐに吐いちゃう→栄養チューブの設置を行う

状態によっては食べることができないこともあるので、そういった場合は栄養チューブを設置し、半ば強制的にでも与えるべきです。

栄養療法については下記の記事で僕が詳しく解説しています。

【摂食困難】過度な食欲不振、偏食、拒食に対応するために ~最終手段は医療で対応~ - 犬を飼うということ

 

『鎮痛薬の使用』

急性膵炎は自分の臓器が消化液によって溶かされている状態です。それはもの凄い腹痛が伴っていると容易に想像できます。強烈な痛みは動物のQOLを下げるだけでなく、神経を刺激し、血圧や心拍数をあげたり、ストレスホルモンが出たりなど、体にとって良い作用はありません。鎮痛薬は現在痛みがなくても予防的に投与してあげる方が良いです。

『抗炎症薬で回復速度を上げる』

炎症が持続している状態では膵臓の回復が遅れてしまい、慢性膵炎へと移行してしまう可能性もあります。膵臓では生命維持に大切なホルモンをたくさん生成しています。炎症が長引くことで、正常な領域も攻撃を受けるなんてことが元も子をありません。炎症のコントロールは大切です。

【最後に】

今回は『急性膵炎の治療法』について紹介しました。急性膵炎の治療は5つのアプローチで進めていきます。腹痛や嘔吐が数日続いている時は膵炎の可能性があるので、早急に動物病院へ連れていきましょう。

 

【本記事の参考書籍】

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 283-285p

 

【関連記事】

『急性膵炎に関する他の記事』

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『膵炎を起こしやすい病気』

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『栄養療法について』

www.withdog.site