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【肝線維症・肝硬変】~すきま時間の獣医学~

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【はじめに】

今回は『肝線維症・肝硬変』についてです。"沈黙の臓器"と呼ばれる肝臓ですが、肝臓にだって限界はきます。

「もう無理!」

肝臓が壊滅的状況に陥った肝硬変。どんな症状が出てくるのかを見ていきましょう。

 

【目次】

 

【肝線維症・肝硬変について】

『肝線維症・肝硬変とは』

微妙な違い
肝線維症(hepatic fibrosis)と肝硬変(cirrhosis)は共に慢性肝炎の終末像を示す表現として使用されますが、微妙な違いがあります。

肝線維症とは病理学的な表現では、『肝臓内で結合組織(線維)が増生している"組織学的変化"』を意味しています。

一方で、
肝硬変とは『肝線維症+偽小葉の形成』を意味しています。(←正確にはちょっと違いますが、ここでは割愛)
偽小葉とは結合組織が増生し、肝臓の小葉構造が改変されたものを言い、増生した結合組織によって、あたかも新しい小葉を構成するように見えることからそう呼ばれています。

肝線維症が発展すると肝硬変が起こるので、ほとんど同義なのですが、一応はじめに説明しておきます。

『何が原因で起こるのか』

肝臓の障害が原因となります。

肝臓の炎症によって、肝臓へ炎症細胞が集まってきます。

その炎症細胞から放出される蛋白分解酵素によって、肝細胞やその周囲の結合組織は破壊されます。

破壊された場所は線維組織によって置換されます。

線維がぎっちり詰まるため。、血管周囲も圧迫され、血行が悪くなります。

肝細胞への血流量が低下し、肝機能が落ちます。

以上のように、肝臓は『肝臓の障害』をきっかけに線維の増生と著しい肝機能低下を繰り返し、『肝硬変』へと発展していきます。

 

『症状』

肝硬変の原因によって異なりますが、肝機能が著しく低下する病気なので、肝機能低下に伴う症状が認められます。

具体的な症状
・元気消失
・食欲低下
・体重減少
・発熱
・被毛削剛
・多飲多尿多飲多尿を示す疾患
・嘔吐←肝性脳症による
・黄疸←肝性黄疸
・小肝症←肝臓に栄養が行かない
・腹水←アルブミン産生低下による
・浮腫←アルブミン産生低下による
・出血傾向←血液凝固因子産生低下による
・メレナ←出血傾向による
・肝性脳症←尿素回路が動かない

 

『検査でわかること』

「血液検査」

一般血液検査
血液検査ではストレスパターンが見られることがあります。血小板減少症も起こりやすく、その際は凝固系検査を行います。

BUNと消化管出血
消化管出血が起こると、Cre正常でBUNが上昇してきます。これは腸管内に出た蛋白が血液が分解され、アンモニアとして吸収されるためです。ただ、肝硬変では尿素回路が回ってない場合もあるのでBUNは下がっている可能性も頭に入れておきます。

低アルブミン血症
正常な肝臓ではアルブミンの合成を行っています。肝硬変では肝機能が低下しているため、低アルブミン血症は肝硬変を起こした75%の動物で確認されています。

肝マーカーのALTとAST
ALTとASTは肝細胞内に多く含まれている酵素で、肝細胞が壊れると血中に出てきます。肝硬変まで進行すると、壊れる肝細胞自体がもう無くなっているので、ALTやASTが上昇していないケースも多々あります。

その他
そのほかに低コレステロール血症が見られる場合もあります。

「血液凝固検査」

PTやAPTTなどの内因性・外因性の凝固経路が共にやられてしまっていることがあります。フィブリノーゲンの減少も認められます。

「病理組織診断」

肝硬変の確定診断を行うために必要な検査です。レントゲン検査や超音波検査と共に行われ、総合的な解釈を踏まえて確定診断を行います。

『治療法』

治療法はざっくり言うと、6つの側面から肝硬変へアプローチしていきます。

①食事管理
②酸-塩基平衡、電解質の補正
③肝性脳症のコントロール
④腹水/浮腫のコントロール
⑤消化管出血への対処
⑥抗線維化薬の投与

これらの方法で治療を進めていきます。

【最後に】

今回は『肝線維症・肝硬変』について紹介しました。この病気は肝細胞が消滅し、肝機能が破綻してしまう怖い病気です。肝硬変は治療で完全復活することが難しいため、原因疾患を早めに倒して、予防することが大切です。

 

【本記事の参考書籍】

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2, 文英堂出版, 2014, 258-259p

 

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