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猫のリンパ腫③~症状~

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【はじめに】 

今回は『猫のリンパ腫~症状~』についてです。
猫のリンパ腫の症状は発生した場所、そしてその腫瘍の悪性度によって大きく異なります。今回はそれらを発生部位別に解説していこうと思います。

猫のリンパ腫①~統計とリスク因子~

猫のリンパ腫②~病因と挙動~

猫のリンパ腫③~症状~

猫のリンパ腫④~診断とステージ分類~

猫のリンパ腫⑤~治療法と予後~

【目次】

 

【腸管型リンパ腫の症状】

腸管型リンパ腫は腫瘍に関連した症状というよりは腸疾患があると見られるような非特異的な症状であることが多いです。

『低グレード小球性リンパ腫』

低グレード小球性リンパ腫の症状
・体重減少(83~100%)
・嘔吐(73~88%)
・食欲不振(66%)
・下痢(58%)

・黄疸(7%)
などです。

Common clinical signs were weight loss (83%), vomiting (73%), anorexia (66%), and diarrhea (58%). Seventy-eight percent of cats tested had low serum cobalamin concentrations. 引用文献:Outcome of cats with low-grade lymphocytic lymphoma: 41 cases (1995-2005).

 

腹部の触診
腹部の触診では1/3の症例で腸管壁の肥厚や腫瘤の触知ができます。

『高グレード型リンパ芽球性リンパ腫』

高グレード型リンパ芽球性リンパ腫は低グレード型小球性リンパ腫と類似した症状がみられますが、こっちの方が急速な浸潤増殖により、腹部の触診を行うと腸管の腫瘤や腫大した腸間膜リンパ節、肝臓が触知できます。

このタイプのリンパ腫では黄疸がよく見られます。そのほかに結腸にまで浸潤していると、血便やしぶり腹なども見られることがあります。

『LGLリンパ腫』

LGLリンパ腫では
・食欲不振
・体重減少
・虚脱
・嘔吐
などが見られます。

そのほかに腹部の触診ではLGLリンパ腫の半分の症例で、腹部の腫瘤を触知できます。
肝腫大、脾腫大、腎腫大も起きています。
腹水、胸水の貯留、黄疸などは10%以下の症例でしか見られず、稀です。

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【縦隔型リンパ腫の症状】

縦隔型リンパ腫で見られる症状は呼吸促迫(呼吸が速い)や呼吸困難です。

胸水が貯留していることも多く、その性状は乳糜性滲出液とされています。また、腫瘍細胞(リンパ芽球)が混入しています。

稀にホルネル症候群と前大静脈症候群が見られます。
ホルネル症候群とは
交換神経経路が障害を受けた際に生じる症状
①眼球陥凹
②眼瞼下垂
③瞬膜突出
④縮瞳
が主な症状

前大静脈症候群とは
前大静脈の血流閉塞によって生じる症状
・顔面浮腫
・前肢浮腫
など前方の循環障害を示唆する症状が現れる

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【節性リンパ腫の症状】

節性リンパ腫では病気の悪性度や大きさによって、現れる症状が異なります。
よく見られるのは沈鬱と活力の低下と言われています。

ちなみに案外リンパ節の腫脹は見られないようです。

 

【鼻腔内リンパ腫の症状】

猫の鼻腔内リンパ腫でよく見られる症状についてです。
主な症状
・鼻汁(60~85%)
・鼻血(20~70%)
・吸気性喘鳴、いびき(20~60%)
・顔面の変形(0~20%)
・食欲不振(10~60%)
・流涙(10~30%)
・その他:努力性呼吸や咳

Cats commonly presented with 1 or more of the following clinical signs: purulent or mucoid nasal discharge (n = 57), facial deformities (n = 22), epistaxis (n = 21), and sneezing (n = 20). Other presenting clinical signs included sterterous breathing (n = 18), anorexia (n = 14), dyspnea (n = 11), buphthalmos (n = 11), and epiphora (n = 9).  引用文献:Survival Analysis of 97 Cats with Nasal Lymphoma: A Multi‐Institutional Retrospective Study (1986–2006)

鼻汁について
鼻汁は粘液膿性で粘っこく、鼻血が混じることがたまに(約1/3症例)あります。

領域リンパ節の腫脹
領域リンパ節の腫脹もたまに見られます。

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【腎臓型リンパ腫の症状】

腎臓型リンパ腫の症状では腎機能の低下とともに以下のような症状が見られます。
・食欲不振
・体重減少
・多飲多尿
などが見られます。

身体検査では
腎臓の腫大が確認でき、腎臓の辺縁が不整でボコボコした様子が触知できます。

【中枢神経系リンパ腫の症状】

中枢神経系リンパ腫では頭蓋骨内に発生した場合と脊髄に発生した場合で少し症状が異なります。

『頭蓋内に発生した場合』

・運動失調
・意識レベルの低下
・失明
・前庭疾患
・痙攣
などです。
頭蓋内に異常が見られる猫で痙攣を起こしたもの8%はリンパ腫だったという研究論文もあります。

『脊髄に発生した場合』

・運動麻痺
・下半身麻痺
・運動失調
・四肢不全麻痺
・痛み
・便秘
などです。
さらに胸腰椎に発生すると、
膀胱を支配している神経の麻痺や深部痛覚の消失、尻尾を振れなくなるなどの症状が現れます。

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【皮膚型リンパ腫の症状】

皮膚型リンパ腫の症状は以下のようなものがあります。
・紅斑
・脱毛
・鱗屑(フケのこと)
・結節
・潰瘍性プラーク
などです。

【部位に関わらず起こる症状】

解剖学的な場所を問わず見られる症状があります。
一般的なものなのですが、
・元気消失
・食欲不振
・体重減少
さらに骨髄浸潤が起これば→非再生性貧血
そして、高カルシウム血症を起こせば→多飲多尿
が見られます。

ちなみにリンパ腫では腫瘍随伴症候群として高カルシウム血症がよく起こります。
高カルシウム血症を患っている猫を調べたところ約10%(71匹中7匹)の猫がリンパ腫であったことがわかりました。

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Neoplasia was diagnosed in 21 cats (Table 1). Two thirds of these cats had either lymphoma (n=7) or squamous cell carcinoma (n=7). Two cats had renal lymphoma. 引用文献:Hypercalcemia in cats: a retrospective study of 71 cases (1991-1997).

 

【最後に】

今回はリンパ腫が発生する解剖学的位置で分けて症状を説明しました。
以下の図のように簡単にまとめておきます。

位置別で見るリンパ腫の症状(図解)

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【本記事の参考書籍】

Stephen J. Withrow ; David M. Vail ; Rodney L. Page : Withrow&MacEwens SMALL ANIMAL Clinical Oncology. 5th ed.,  ELSEVIER, 2013, 638-653p

 

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『リンパ腫が起こりやすい疾患』

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