オタ福の語り部屋

獣医学を追求する。その先に見えるものは…

【熱中症】動物にもある、『ペットの熱中症』にご用心!!③治療法と予後

スポンサーリンク

f:id:otahukutan:20190811114850p:plain

【はじめに】

今回は『ペットの熱中症の治療法』です。
熱中症の治療の目的は高体温症に関連した症状を抑えることと、心臓や血管系のサポートをしてあげることです。
循環血液量を回復させてあげ、腎臓などの臓器にきちんと血液を供給し、場合によっては抗菌剤などで、感染症を治療していきます。
具体的にどのような治療を行うのか見ていきましょう。

【関連記事はこちら】

【熱中症】動物にもある、ペットの熱中症にご用心!!①概要

【熱中症】動物にもある、『ペットの熱中症』にご用心!!②症状と検査

【熱中症】動物にもある、『ペットの熱中症』にご用心!!③治療法と予後

 

【目次】

 

【なる早で冷やす!!】

『熱中症を感じたら』

熱中症で一番大切なのは体温を下げることです。

まずは涼しい場所へ
日陰のある涼しい場所へ移動させ、直射日光を避けましょう。

次に、体を表面から冷やす
クーラーパックを腋の下や鼠径部(股の内側)に設置し、効率よく冷やします。エアコンや扇風機なども良いです。

とにかく重要なのは時間!!
熱中症を起こしていると感じた場合、早急に体を冷やしてあげて下さい。30~60分以内に39.4℃まで下げることが重要です。
ちなみに、症状が発症してから90分以内に動物病院へ連れて行った場合、予後が良いことがわかっていて、
さらに病院へ連れて行くまでに飼い主さん自らペットの体を冷やしてあげていた場合も致死率が下げられることがわかっています。

飼い主さんがやることは、、、
熱中症が起こっていると感じたら、30分以内に体を冷やしてあげ、90分以内に動物病院へ連れて行くことです。

f:id:otahukutan:20190811114850p:plain

『冷やし方・冷やし過ぎには注意』

「冷やす、冷やす」と言っても冷やし方は重要で、冷やし過ぎにも注意が必要です。

体温調節中枢が傷害を受けている場合
発熱性の疾患などが持続するとその影響によって、視床下部にある体温調節中枢が壊れてしまっている場合があります。
体温調節中枢が壊れている場合、高体温症が起きていると言って勢いよく冷やしていると39.4℃を過ぎたあたりから、急激にガクッと体温が下がってしまいます。急いで冷やすのが重要ですが、体温はこまめに測定しておく必要があります。

冷水には絶対浸けない
体を一気に冷やそうと水風呂に入れようとする方がいらっしゃいますが、それは逆に危険なので絶対にやめておきましょう。
なぜダメなのか?
水風呂に入れると、体の表面を走っている毛細血管が収縮してしまいます。すると、体表からの放熱が妨げられ、逆に体の中心部の体温が上がってしまうのです。

 

冷やし過ぎた時に見られる症状
犬を冷やしすぎると震え始めます。ガクガクと震えて、熱を生み出そうとしているのです。震えが見られたら、冷やすのをやめましょう。

『意外と知らない冷やし方』

マッサージをしてあげる
体をマッサージしてあげると、体表血管の血流が良くなり、効率よく体温を下げることができます。

【輸液をしてあげる】

輸液を行う行わないはその子の状態に合わせて決定します。

決定時に考えること
・中心静脈圧
・電解質のバランス
・血圧
・肺音の聴診
・膠質浸透圧
などです。これらの因子の乱れ具合を考慮し、輸液療法を行います。

輸液を行う
輸液は電解質の不均衡を補正するために行うのですが、輸液を行う前に、脱水が修正された際に電解質がどのような濃度になるか計算してから行うべきです。
そして、輸液はゆっくり24時間以上かけて行います。
ボルベン(ヒドロキシエチルデンプン)は高体温症の動物を回復させるのに優れていると言われています。

 

【薬物療法】

『抗菌薬も大事!!』

熱中症になっているときは腸管の壊死などによって菌血症が起こっている可能性があります。広域スペクトラム抗菌薬(多数の細菌に有効な抗生物質)を使用し、菌血症のリスクを抑えてあげるのも良いでしょう。

注意点としては腎臓を障害するリスクのある薬は使用しないことです。熱中症のとき、腎臓もかなり傷害されているので、腎臓に優しい抗菌薬がいいです。

抗菌薬の例
・セファロスポリン
・アンピシリン(20-30mg/kg IV QID)
・メトロニダゾール(10mg/kg IV TID)

『解熱剤の使用は禁忌』

「熱あるなら、解熱剤使えばいいじゃん」解熱剤の使用は絶対に禁忌とされています。

理由その①
解熱剤の作用は病気などで高熱を呈している動物の体温調節中枢の設定値を下げる役割であり、熱中症の動物に対して効果的ではないから。かえって、悪化させうるので注意しましょう。

理由その②
解熱剤の高用量の使用は腎臓への血流量を低下させるだけでなく、胃腸の粘膜を荒らしてしまうから。

『おしっこのチェック』

乏尿や無尿が起こっていないかを観察するために尿量を測定し、計算しておくべきです。
目指すべき尿量は1~2mL/kg/hです。
10kgの犬だと一日出る尿量は1 (mL)×10 (kg)×24 (hour)=240mL
になります。

もし、尿量が目標値に達していない場合はドパミンを3~5mcg/kg/minでCRI投与を始めます。これにより、腎血液量が増加し、尿量を増やすことができます。

一向に尿量が上がらない場合は腹膜透析や血液透析を行うことで対処します。

【予後】

重度の高体温症を示している動物では広範囲に渡って臓器が傷害されており、正しく治療されたかどうか、そして高体温症の期間・程度によって予後が変わってきます。

死亡率
ある研究では高体温症の死亡率は50%とと記載されています。

リスクをあげる因子
急性腎障害、DIC(播種性血管内凝固)などが発生している場合は死亡率を上げるとされています。

発症から24時間が"山"
熱中症の発症が確認されてから最初の24時間に亡くなるケースが多いです。逆に48時間生きることができれば生存率は徐々に上がっていくことがわかっています。

f:id:otahukutan:20190811142510p:plain

【最後に】

今回は熱中症の治療法と予後について解説しました。熱中症の治療法としてはできる限り早く体を冷やして上げることです。上がりすぎた体温を下げることで、死亡率は低下します。そしてできる限り早く病院へ連れて行き、輸液や投薬を行ってもらい、状態回復に努めます。これから暑くなってくる時期、ペットの熱中症についても十分ご注意ください。

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Ettinger ; Edward C. Feldman ; Etienne Cote : Textbook of veterinary internal medicine. 8th ed., ELSEVIER, 2017, 562-566p

 

【関連記事】

www.otahuku8.jp

www.otahuku8.jp

www.otahuku8.jp