オタ福の語り部屋

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『高血糖』~血液検査を考える~

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【はじめに】

今回は前回の『低血糖の記事』に引く続き『高血糖』についてお話します。
糖尿病やダイエット、筋トレをする人が多く、普段から血糖値を気にする人が多いのではないでしょうか?
では一方で、動物ではどうでしょう?
動物の高血糖で考えられる疾患について、血液検査の結果を中心にお話できたらと思います。

 

【目次】

 

【高血糖の定義と症状とは?】

『高血糖の定義は当たり前のあれだ』

高血糖の定義は当たり前ですが、血糖値が基準値上限を超えた状態のことを言います。
具体的には>130mg/dLを目安としています。
高血糖の定義(イメージ)

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『高血糖で現れる症状とは』

ここでは原因疾患による症状ではなく、単に高血糖の場合に見られる症状について説明します。

高血糖の症状が見られるのは
・犬の場合:180-200mg/dL
・猫の場合:200-280mg/dL
を超えたあたりからです。
 

多飲多尿は特徴的
具体的な症状としては『多尿』です。腎臓で再吸収しきれないほど高血糖になった場合、尿中に糖が混入します。糖が混じった尿は浸透圧(水を引っ張る力)が上がり、尿量を増加させます。その結果、おしっこの量や回数が増えるということです。 

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多尿に続いて『多飲』が現れます。
尿がたくさんでるので、喉が渇き、水をたくさん飲んでしまうというわけです。もし、水が飲める環境でない場合『脱水症状』が見られるので、水は切らさないように注意しましょう。

多飲多尿が見られた時、考えられらる疾患は高血糖以外にたくさんあります。
多飲多尿に関してはこちらをご参考にしてください。

www.otahuku8.jp

 

【見落としがち⁉︎ストレスによる高血糖】

『ストレス誘導性高血糖とは』

ストレスを感じた時に血糖値が急上昇する『ストレス誘導性高血糖』と高血糖があるのをご存知でしょうか?
特に猫の場合はこれによる高血糖が起こりやすく、生理的な反応であるため病気と考えられることはありません。

『なぜストレスで血糖値が上がるのか』

ストレス誘導性高血糖の原因には『ホルモン』が関与しています。動物がストレスを感じた時、体内で放出されるホルモンとして以下のようなものがあります。

ストレスを感じた時に出るホルモン
・カテコラミン
・コルチゾール
・グルカゴン
・成長ホルモン
などです。
これらのホルモンには筋肉を分解して血糖値をあげる作用(糖新生)であったり、インスリンの働きを邪魔する作用があります。これらの作用によって血糖値が急激に上昇してしまうのです。

ストレス誘導性高血糖(図解)

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糖新生のメカニズム(図解)

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『ストレス誘導性高血糖を疑う時の対処法』

ストレスを感じたことによる高血糖ではないかと疑われる場合、正確な血糖値を知りたいのであれば、対処法としては以下のようなものがあります。

具体的な対処法
・しばらく時間をおいて再測定
・尿検査
・血中フルクトサミン濃度の測定
などです。

しばらく時間をおいて再測定
ストレス下での測定はどうしても高血糖になってしまうので、一度落ち着かせてから測定するなどの対策をとります。

尿検査
尿検査で見るのは尿糖が出ているかどうか。通常、ストレス誘導性高血糖の場合は尿中に糖が混じることはありません。尿糖を確認することで、生理的な反応による高血糖かどうかを調べることができます。

血中フルクトサミン濃度の測定
フルクトサミンとは血中のタンパク質がブドウ糖と結合した糖化タンパクのことを言います。フルクトサミンは高血糖が持続してる際に認められる物質なので、フルクトサミンが上昇している場合はストレス誘導性高血糖のように一時的な高血糖ではなく、高血糖状態が慢性化していることを示唆しています。

【高血糖を引き起こす原因】

高血糖を引き起こす原因について、箇条書きで網羅しています。

『生理的な原因』

・ストレス誘導性
・食後
・発情期

『内分泌疾患』

・糖尿病
・耐糖能異常(←糖尿病予備群)
・先端肥大症(猫):成長ホルモン産生性下垂体腺腫
・先端肥大症(犬):発情期の乳腺で成長ホルモンが産生される
・副腎皮質機能亢進症
・褐色細胞腫
・甲状腺機能亢進症

『膵外分泌に由来する疾患』

・急性膵炎
・慢性膵炎(膵外分泌不全や糖尿病に関連する)
・膵臓腫瘍

『医原性』

・コルチコステロイド
・黄体ホルモン作用物質(プロげスターゲン)
・メデトミジン:α2-作動薬
・β阻害薬
・ブドウ糖液
・静脈栄養療法

『その他』

・エチレングリコール 
・頭部外傷

【どのように診断していくか】

前項で高血糖を引き起こす原因を書き並べました。これらの原因の中から、どれに該当するかを調べていきます。

流れとしては問診で経過を聞き、身体検査を行います。このとき、前項で紹介した『医原性』に該当する治療を受けていないかを確認しておく必要があります。
その後、血液検査、尿検査を行い、腹部の画像診断で副腎や膵臓などに異変がないかを調べていきます。

さらに必要であると感じれば、甲状腺ホルモンであるT4濃度を測定をしていきます。

 

『糖尿病/先端肥大症の診断』

症状
多飲多尿、多食、体重減少が挙げられます。

一般検査
血液検査ではALT、ALP、コレステロール、フルクトサミンの上昇が認められます。
尿検査では尿糖や尿路感染症が起こっているケースがほとんどです。

特殊検査
IGF-1や成長ホルモンを検査することで、先端肥大症を診断していきます。成長ホルモンはパルス状に放出されることと半減期が短いことから、IGF-1の方が診断精度は高いとされています。

詳しくはこちら
『犬の糖尿病』徹底解説編

 

『副腎皮質機能亢進症の診断』

症状
多飲多尿、多食、腹囲膨満、脱毛、呼吸促迫

一般検査
血液検査ではALT、ALP、コレステロールの上昇とストレスパターンが認められます。

特殊検査
・腹部エコー
・ACTH刺激試験
・低用量デキサメタゾン抑制試験
・尿コルチゾールクレアチニン比(UCCR)
などを行い、下垂体由来か副腎由来を鑑別していきます。

詳しくはこちら
犬で多い、『クッシング症候群』とは? 

 

『甲状腺機能亢進症の診断』

症状
多食、体重減少、甲状腺腫

一般検査
血液検査ではALT、ALPの上昇とストレスパターンが認められます。

特殊検査
TT4の測定

詳しくはこちら
高齢猫に多い、甲状腺機能亢進症

 

『褐色細胞腫の診断』

症状
呼吸促迫、ストレス、間欠性の虚脱、神経学的異常

一般検査
著変なし

特殊検査
・血圧の上昇
・眼底検査
・腹部画像診断:副腎のエコーなど
・尿中あるいは血漿中カテコラミン

『膵臓疾患の診断』

症状
急性または慢性の腸管疾患であったり、腹痛、下痢などが認められます。

一般検査
血液検査ではLipが上がったり、CRPが上がったりします。

特殊検査
・腹部エコー
・cPLI:犬膵特異的リパーゼ
・fPLI:猫膵特異的リパーゼ
・TLI:トリプシン様免疫活性物質

これらの結果を元に膵外分泌不全、膵炎、膵臓腫瘍なのかを見分けていきます。

【最後に】 

今回は『高血糖』が見られた動物の体内で何が起こっているのか、そしてその診断方法について解説しました。高血糖はストレスの様な生理的な反応から糖尿病や副腎皮質機能亢進症などの内分泌疾患まで幅広い原因があります。高血糖は決して軽視してはならず、正確な検査と診断によってコントロールしていくことが大切になります。

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Ettinger ; Edward C. Feldman ; Etienne Cote : Textbook of veterinary internal medicine. 8th ed., ELSEVIER, 2017, 246-250p

【関連記事】

『その他の血液検査に関する記事』

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『高血糖を引き起こす疾患の記事』

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