オタ福の語り部屋

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骨の腫瘍『骨肉腫』を簡単に解説してみた!

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【はじめに】

今回は『骨肉腫』と呼ばれる骨の腫瘍について簡単に解説していこうと思います。
骨肉腫は中~大型犬に多い腫瘍で手足によく発生します。
「最近、脚が浮腫んでいるな」
「脚を痛がっているのかな」
ちょっとした"異変"を感じれば、検査を行うことをお勧めします。
では、骨肉腫とはどのような主要なのか見ていきましょう!

【目次】

 

【15kg以上の犬は注意!】

骨肉腫の発生率を調べた研究では
・40kg以上の犬が29%
・15kg以下の犬が5%
という結果になりました。超大型犬の部類に入る40kg以上の犬で特に発生率は多いものの、骨肉腫の発生は15kg以上の犬で95%を占めています。
中〜大型犬を飼育されている方は腫瘍のリスクが高まる中高齢(約7歳)以降は注意が必要です。


【骨肉腫ができやすい場所は?】

骨肉腫が発生する場所は主に、「四肢の骨」「それ以外(頭蓋骨や椎骨)」に分けられます。
さらに、骨肉腫が発生しやすい場所はこれもまた体重によって好発部位が異なります。

『大型犬の場合』

大型犬の場合、四肢での発生が多く、具体的には四肢での発生率が95%で四肢以外の発生率は5%となっています。

前脚の好発部位
前脚での発生は手首周り肩甲骨あたりでの発生が多いです。

後脚の好発部位
後脚での発生は膝回り、すなわち太ももの下脛の上の部分で発生が多いです。

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『小型犬の場合』

小型犬は大型犬と異なり、四肢以外の発生が多いです。
具体的には四肢の発生率が41%、四肢以外の発生率が59%となっています。

四肢以外の好発部位
四肢以外ではどのような場所で発生しやすいのかというと、そのほとんどは頭部(顎骨や頭蓋骨、鼻腔)であり、約72%を占めています。
残りの28%内に、脊椎や肋骨、骨盤などが入ってきます。 

Axial skeletal osteosarcomas were evaluated retrospectively in 116 dogs. Thirty-one tumors occurred in the mandible, 26 in the maxilla, 17 in the spine, 14 in the cranium, 12 in the ribs, 10 in the nasal cavity and paranasal sinuses, and 6 in the pelvis. 引用文献:Canine axial skeletal osteosarcoma. A retrospective study of 116 cases (1986 to 1989).

 

【腫れに注意、骨肉腫の症状とは】

『具体的な症状とは』

腫れてきてないですか?
骨肉腫が発生すると、その部位が浮腫むように腫れてきます。他の部位と比べて腫れているように感じたら、注意しましょう。

痛がる様子はないですか?
骨肉腫が四肢に発生した場合、かなりの痛みを伴うため、跛行といって患肢を上げるようになります。
急に歩くのを嫌がったり、足を上げるようになったら、足を触ってあげましょう。もう片一方の足と比べて、浮腫んでいないかチェックします。

特に注意すべき部位
前項でもお話ししましたが、骨肉腫の好発部位は"手首周り"、"肩周り"、"膝周り"です

『骨では何が起きているのか』

骨に発生する悪性腫瘍、『骨肉腫』ですが実際骨の中では何が起きているのでしょうか?
骨肉腫では骨の"破壊""増殖"が同時に起こっています。

骨破壊
腫瘍細胞が正常の骨をどんどん破壊していきます。

骨増殖
腫瘍化した骨組織が増殖していきます。骨から増殖した腫瘍が骨の周囲にある骨膜を押し上げることで、犬は激痛を感じます。
レントゲン検査ではこういった骨の異常がコッドマン三角サンバーストなどといった異常所見として見られます。

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【骨肉腫の治療法】

『犬にとってはこれが一番良い ~断脚という選択~』

"断脚"それは骨肉腫と診断を受けた犬と過ごす飼い主さんが必ず直面する問題です。
 脚を切断するということはショッキングなことであり、容易に受け入れられることではありません。
ここでは「脚を切るのは可哀想だ」という感情的な部分を挟まず、医学的になぜ必要なのかを話していきたいと思います。

断脚をしなければどうなるか
骨肉腫と診断され、断脚しなかった場合、どんどん腫瘍は大きくなります。腫れは酷くなり、やがて血液の流れが悪くなり、かなり浮腫んできます。
浮腫むと脚は重くなります。そして壊死なども進行し、痛みが強くなります。
脚としての機能を失った重くて痛む脚(モノ)をぶら下げて、生活していくことになります。

一方で、断脚を行うと
普段から4本脚で歩いている動物たちは3本脚になっても散歩どころか元気に走り回ることさえできます。腫瘍がぶら下がった痛くて重い脚を温存しているより、犬のQOLはかなり上昇します。
転移巣が見つかったとしてもQOLを大きく下げている患肢の切断は行うべきです。

『骨肉腫は化学療法の有効性が確認されている』

 骨肉腫は化学療法の有効性が確認されている稀な腫瘍です。
ある有名な実験で
『断脚のみ』vs『断脚+術後の化学療法』の2つの群で比較を行なったところ2グループ間で生存期間に有意な差が出たという報告があります。

以下のグラフが結果を示しています。
このグラフはKaplan-Meierグラフというもので生存率(縦軸)と生存期間(横軸)を表しています。
・点線が断脚のみの群(19匹)
・実線が断脚+術後抗がん剤投与の群(19匹)

引用文献のFig1Results of statistical analysis indicated that the dogs treated with chemotherapy and amputation lived significantly longer (P = 0.04) than the dogs treated with amputation alone (Fig, 1). 引用文献:Canine osteosarcoma. Treatment by amputation versus amputation and adjuvant chemotherapy using doxorubicin and cisplatin.

 

【予後:覚悟しておく厳しい現実】

骨肉腫は悪性の腫瘍です。実際に骨肉腫が発見された時にはほとんどの症例で肺などに遠隔転移しています。
断脚も延命治療、緩和治療の1つでしかなく、完治を目指すのは非常に難しい腫瘍です。
上記のグラフを見てもわかるように、治療法に関わらず50%の症例は10ヶ月以内に亡くなっています。

【最後に】

今回は骨肉腫について説明しました。骨肉腫は大型犬で多く発生する腫瘍で、特に四肢での発生が多い腫瘍です。
中年齢以降は脚をかばうような歩き方をした場合、反対の脚を比較して腫れていないかをチェックしておきましょう。そして、いざ骨肉腫と診断を受けた際は覚悟を決めて断脚と抗がん剤治療を初めてあげましょう。

【関連記事】

www.otahuku8.jp

 

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Withrow ; David M. Vail ; Rodney L. Page : Withrow&MacEwens SMALL ANIMAL Clinical Oncology. 5th ed.,  ELSEVIER, 2013, 463-488p