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犬猫の食物アレルギー、どうやって診断・治療するの?

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【はじめに】

前回、前々回と食物アレルギーの概要と症状について説明してきました。今回は食物アレルギーの診断方法と治療法についてお話しします。食物アレルギーはしっかりと検査をするとなるとかなりの時間とお金がかかります。
食物アレルギー検査にはどのような検査があるのか、そして除去食療法など治療法についてもお話ししていきます。

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犬猫の食物アレルギー、どうやって診断・治療するの? 

 

【目次】

 

【まずは身体検査】

身体検査を行い、どのような症状が出ているかを把握します。具体的な症状については前回の記事をご覧ください。

 

【めっちゃ大事!!皮膚検査】

『皮膚のルーティーン検査とは』

まずは感染症がないかを確かめないといけません。外部寄生虫、膿皮症、皮膚真菌症(マラセチアなど)が無いか検査します。感染症があるのにアトピーを疑いステロイド(免疫抑制剤)を使用したりすると、治るどころか悪化します。

感染症の除外診断を行わずして、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーだとは絶対に言えません。

皮膚のルーティーン検査
・櫛(くし)検査
・ウッド灯検査
・皮膚掻爬物鏡検
・毛検査

・細胞診
・耳鏡検査
・耳垢検査
などがあります。1つずつ簡単に説明していきます。

 

『櫛検査』

この検査は非常に簡単で、目の細かいノミとり櫛を用いて、全身をコームします。そして、櫛にトラップされた寄生虫や被毛の付着物を観察します。

検出できるもの
・ノミ
・シラミ
・ハジラミ
・ツメダニ


『ウッド灯検査』

ウッド灯とはコバルトあるいはニッケルのフィルターを通して253.7nm の波長をもつ紫外線を照射する装置です。

このウッド灯を全身にくまなくゆっくり照射することで真菌が黄緑色に発光して見えてきます。

検出できるもの
Microsporum canis

ただ弱点が多い
ウッド灯によるM. canisの検出率は30~80%ととムラが多く、M.gypseumやTrichophyton属では発光しません。また、カーペットや衣類の繊維で発光する場合もあります。
ウッド灯試験が陰性だからと言って、感染症の除外はできませんし、発光部位は必ず顕微鏡検査する必要があります。

 

『皮膚掻爬物鏡検』

皮膚掻爬試験は耳かきのような銀匙を用いて、皮膚の一部を削り取る検査です。見たい対象によって削り取る深さが異なります。削り取った検体はスライドガラスに移して、アルカリ溶液を一滴垂らし、カバーガラスで圧平します。

検出できるもの(寄生部位)
・ヒゼンダニ(皮膚の浅層):疥癬症の原因寄生虫。検出率は30%
・ツメダニ(皮膚の浅層):検出率は高くないので、陰性だからと否定はできない。
・ニキビダニ(毛包内):検出率は高い。
・皮膚糸状菌

 

『毛検査』

毛検査は毛周期や被毛の形態を評価するために行います。抜毛鉗子で少量の被毛をゆっくり引っこ抜きます。スライドガラスに毛根、毛幹、毛尖すべてが入るように乗せます。

検出できるもの
・皮膚糸状菌
・ニキビダニ

 

『細胞診』

皮膚検査における細胞診のやり方は何種類かあります。

①ガラス直接押捺(スタンプ)
スライドガラスを病変部位に押し付けて、細胞成分を採取します。これは湿っている病変での検体採取に向いています。

②テープストリップ
スコッチテープ(セロハンテープ)で病変部をペタペタ当てて、それをスライドガラスに貼り付け、顕微鏡検査します。乾いている病変での検体採取に向いています。

③スワブ採取
綿棒を病変部でコロコロ転がし、検体を採取する方法です。耳や指間など、狭くて湿っている場所で有効です。

④針吸引
病変部に針を刺して、吸引してくる方法です。結節や腫瘤などの隆起性病変や、膿瘍などの液体が溜まっているような病変に有効です。

ルーティン皮膚検査の重要性(図解)

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【抗原特異的IgE検査とリンパ球反応試験】

これら2つの検査は減感作食事を探す目的で行います。ただ、コストパフォーマンスが悪いので、一般診療の獣医から検査するように促しにくいのが現状です。

理由としては
まず検査代が高い。2つで5~7万円かかります。検査だけで笑
次に、検出力がそこまで高くない。2つで陰性陽性別の結果が出ることもあります。
さらに、リンパ球反応試験は薬の影響も受けるのでやりにくいです。

これらの理由から、検査するように推しにくいのが現状です。皮膚科を専門でやられている先生はこの検査結果をうまく診断の手がかりとして利用することができるので、強く推される方もいらっしゃいますが。

 

【除去食試験】

『除去食試験とは』

食物アレルギーや食物不耐症といった食物有害反応の診断で一番大切なのは除去食試験です。

除去食試験とはこれまでに食べたことのある食事を網羅し、何が食物有害反応を示すものなのかを調べていきましょうという試験です。

除去食の基本として
・限られた種類の新奇タンパク食
・高消化性、加水分解
・通常食よりも低タンパク
・添加物や血管作動性アミンを含まない
・栄養学的に適している

これらの条件を満たす、ホームメイド食や新奇タンパク食を動物に与えていきます。

加水分解食がアレルギーを起こしにくい(図解)

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『食物有害反応だと臨床的に診断するには』

食物有害反応があると言うためには2つの確認が必要になります。

その①
あるタンパク源を除去したことによって臨床症状が軽減・改善されること

その②
除去した食事を再び与えると、症状が再発すること

以上の2つを確認することで診断をつけます。

 

除去食試験は時間がかかる
除去食試験を行うとかなりの時間がかかります。
消化器症状は除去食試験を行ってから約2~4週間で症状の軽減が見られるのに対し、皮膚症状は約8-12週間かかります。 

A cat was considered to have recrudescence of its clinical signs if fecal consistency deteriorated to the grade assigned before the elimination trial or if the vomiting increased to a frequency similar to that recorded before the elimination trial. Cats were again fed the elimination diet for 2 to 4 weeks until signs resolved. 引用文献:Food sensitivity in cats with chronic idiopathic gastrointestinal problems.

 

『除去食試験の思わぬ障壁』

飼い主さんのご協力が必須
除去食試験で最も大事なのは飼い主さんのご協力です。
除去食試験は徹底的にあるタンパク質の除外に努めます。それは食事に関してはもちろんのこと、薬やおもちゃ、お菓子、同居犬のフードなど、除去したいタンパク質が付着している可能性があるものは接触を避けなければなりません。

食歴を完璧に把握すること
除去食試験では人生で一度も食べたことのないタンパク質を与える試験です。今までに食べたことのあるタンパク質が何であったかを把握しておく必要があります。
とはいえ、
除去食試験で与えるご飯は鹿肉やワニ肉、カンガルー肉、サーモンなどなので、よほどペットフードにこだわっている飼い主さんしかあげていないかと思いますが笑

 

33%の犬で失敗
除去食試験はこの煩雑さから、33%の犬で失敗しています。これは飼い主さんの管理不足や風味がない食事が主な原因です。
除去食試験を行うとなるとどうせやるなら徹底的にしてしまうのが良いでしょう。頑張りましょう!

除去食試験、思わぬ障壁(図解)

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【除去食試験で与えるフード】

『手作りご飯の場合』

1種類のタンパク質と炭水化物を含んだホームメイド食を与えることが除去食フードのゴールドスタンダードであると考えられています。

 

欠点①:新奇タンパクを手に入れにくい
まだ食べていない新奇タンパクを探す必要があります。「ワニ肉や鹿肉を試しましょう」と言われてもスーパーでなかなか売ってないですよね笑

欠点②:栄養が偏る可能性がある
ホームメイド食は限られた種類の成分を毎日ずっとあげるので、長期間行うと栄養バランスが崩れてしまう可能性があります。

 

『療法食ペットフードを買った場合』

致命的な弱点
最近は『単一タンパク』などと言って販売されているペットフードがよく見られます。これらのペットフードは除去食試験を行う上で致命的な弱点があります。

それは複数のタンパク質が含まれているということです。

ある研究によると療法食として販売されている75%のフードは家禽や大豆、牛肉など複数のタンパク質が含まれていることがわかっています。
これは海外の研究結果なので日本のフードがどうであるかは一概には言えませんが、外資系ペットフードメーカーさんなどでは当てはまる場合があります。

 

『加水分解食って使えるの?』

食物アレルギーのペットを持つ飼い主さんは加水分解食を使用している方も多いのではないのでしょうか?加水分解食が実際、使えるのかどうかお話ししていきたいと思います。

Ⅰ型アレルギーの場合
Ⅰ型の場合、肥満細胞の表面にあるIgEをタンパク抗原が架橋することで肥満細胞の脱顆粒が起こり、アレルギー反応を示します。タンパクを細かく分解した加水分解食を使用すると分子量が小さくなるので、IgEの架橋を防ぐことができ、脱顆粒が起きなくなります。結果として、アレルギー反応を抑えることができるという仕組みです。

Ⅳ型アレルギーの場合
Tリンパ球が原因で起こるアレルギー反応なので、加水分解食は効果がありません。
タンパク質をアミノ酸レベルにまで分解したアミノ酸フードだと効果がありますが、現在のペットフードでアミノ酸フードはありません。

そもそも除去食の条件が満たせてない
除去食試験を行う上で大切なのは『新奇・単一タンパクを与える』ことです。市販されている加水分解食はコーンスターチや大豆油、チキンなど複数のタンパクが含まれていて、なおかつ新奇なのか微妙なタンパク質です笑

 

【治療法】

皮膚試験、IgE検査、リンパ球反応試験、減感作療法を行い、食物有害反応を示す原因タンパクが発見できたなら、そのタンパクをなるべく避けるということが治療の原則となります。

市販の療法食が使用できるのであれば、そのほうが飼い主さんの負担も少なく、おすすめです。

僕がおすすめする療法食
1位:鹿肉(ホームメイド食)
2位:カンガルー肉(ロイヤルカナン)、チキン・小麦・サーモン(ラボライン)
3位:加水分解食z/dウルトラアレルゲンフリー(ヒルズコルゲート)

 

【最後に】

食物有害反応の診断方法と治療法についてお話ししました。食物アレルギーなどはまず、感染症の除外診断を行い、そのあと悪さをしている原因や有害反応を示さないフードを探していきます。
そして原因タンパクを発見するとなるべくそのご飯が入っていない食事を食べていけば症状が出ることなく生涯を過ごすことができます。

 

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Ettinger ; Edward C. Feldman ; Etienne Cote : Textbook of veterinary internal medicine. 8th ed., ELSEVIER, 2017, 797-801p

Keith A. Hnilica ; Adam P. Patterson : Small Animal Dermatology A Color Atlas and Therapeutic Guide. 4th ed., ELSEVIER, 2016, 202-207, 222-225p

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 544-545p

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