オタ福の語り部屋

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『犬猫の血管肉腫』を簡単に解説してみた!

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【はじめに】

今回は『犬猫の血管肉腫』について、わかりやすく簡単にまとめていこうという内容です。
【徹底解説編】ですでに一度お話ししていますが、【簡略解説編】大事なポイントだけまとめてお話しできればい良いかなと思っています。

【血管肉腫、徹底解説編はこちら】

発見時には一大事⁈『血管肉腫』って何?① ~概要・統計~

発見時には一大事⁈『血管肉腫』って何?② ~症状・検査法~

発見時には一大事⁈ 『血管肉腫』って何?③ ~治療法・予後~

 

【目次】

 

 

【血管肉腫とはそもそも何か】

『血管肉腫のイメージ』

血管肉腫とは「血管内皮細胞由来の腫瘍細胞が増殖している悪性腫瘍」を意味します。

ん?
イマイチよくわかりませんね笑

ざっくりとしてイメージとしてはこうです。

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血管は血管内皮と呼ばれる細胞が筒状に連続して作られています。1面1面が血管内皮なのです。

この血管内皮細胞がむやみやたらな増殖を繰り返してしまう病気を血管肉腫と呼ぶのです。

 

『なぜ血管内皮細胞が腫瘍化するのか』

血管肉腫の腫瘍細胞は血管をいっぱい作ろうとするため、血管を作るための因子(鍵)と受容体(鍵穴)をたくさん持っています。
そして、自分(腫瘍細胞)で作った血管を作るための因子を自分に浴びせることで、刺激を受け、もっと血管を作ろうとします。
本来ならば、ある条件下でないと出ない因子なのに、自分で作れちゃうので無限に増殖し続けることができるのです。

因子が腫瘍細胞を刺激し、血管新生を促す(図解)

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【血管肉腫の特徴について】

『どこに発生しやすい?』

血管肉腫の発生が最も多いのは脾臓と言われています。
脾臓は胃の左下にある臓器で、血液中で寿命を全うした細胞を食べ、分解し、新しい細胞が作れるようするリサイクル工場のような役割をしています。
逆に「脾臓に発生する悪性腫瘍の2/3が血管肉腫である(2/3ルール)」というデータもあります。

脾臓のほかにどこで発生しやすいか
脾臓の他には、
肝臓や心臓、皮膚などでも発生が認められています。

『好発犬種や年齢は?』

血管肉腫が発生しやすい犬種もわかっていて、
・ゴールデン・レトリバー
・ジャーマン・シェパード
・ラブラドール・レトリバー
などがそれに該当します。大型犬での発生が多いようです。

血管肉腫の好発年齢は中年齢〜高年齢と歳を重ねるたびに発生率が上がっていきます。

 

【血管肉腫の症状は?】

血管肉腫は症状が出にくい
実は血管肉腫って症状が出てくることがあまりないんです。

腸管腫瘍では腸の閉塞や出血から、嘔吐したり、便の形状が変わったり、血便が出たりします。
肝臓腫瘍では黄疸、口腔内腫瘍や皮膚腫瘍では見てわかる場所にあります。

血管肉腫などの脾臓にできやすい腫瘍はそういった特異的な症状が見られないため、発見が遅れてしまうことが多いのです。

症状が現れる状況とは
では症状が出るときはどのような状態なのでしょうか?
血管肉腫で症状が現れるときは、腫瘍が破裂し、腹腔内出血が起こったときです。
これは最悪の状況であることを意味しています。

血管肉腫は構造上、脆く破裂しやすい腫瘍です。そして、その腫瘍が大きくなり、破裂してしまうと、お腹の中で出血が起こり、血圧の低下と循環血液量の低下から、急激な状態悪化へとつながります。

播種も起こる
破裂するとそういった出血性のショックだけでなく、腫瘍の播種も起こるのです。
播種とは血管肉腫の腫瘍細胞がタネを撒くように、肝臓や腹壁、大網など腹腔内にある別の臓器へと転移してしまうのです。

播種の概念(図解)

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【血管肉腫の治療法】

『脾臓の全摘出』

脾臓の血管肉腫では脾臓の全摘出が推奨されています。
脾臓は全摘を行なっても体に大きな影響が出ない臓器なので、全摘出は割と頻繁に行われる手術です。

この手術の注意点
この手術は手技としてはそこまで難易度の高い手術ではないものの、先ほどにも話が出てきましたが、手術では『人為的な播種』を注意すべきです。
血管肉腫はとても脆くなっており、いつ破裂してもおかしくない状況です。慎重に取り出さなければなりません。

術後の注意
脾臓を全摘出した際、体に大きな影響は無いと言いましたが、影響が無いわけではありません。脾臓の全摘出を行うと術後1~2日は心室性不整脈が起こりやすくなると言われています。
術後は心電図をつけて、モニタリングを行うことで対処します。

『抗がん剤治療ならVACプロトコルがおすすめ』

VACプロトコルとは
V:ビンクリスチン
A:アドリアシン®️(ドキソルビシン)
C:シクロフォスファミド
の3つの抗がん剤を用いた治療プロトコルを言います。

このVACプロトコルは安定した治療成績を叩き出しており、とても有効な治療法とされています。

【最後に】

今回、血管肉腫について簡単に解説してみました。
血管肉腫は症状が現れにくいのに、症状が出た頃には最悪の事態になっているということがあります。高齢の犬猫で「うちの子、病気知らず」だという方でも、一度ペットの健康診断を行なってみては如何でしょうか?

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Ettinger ; Edward C. Feldman ; Etienne Cote : Textbook of veterinary internal medicine. 8th ed., ELSEVIER, 2017, 2091-2100p

Spencer A. Johnston ; Karen M. Tobias : veterinary surgery small animal. 2nd ed., ELSEVIER, 2017, 1557-1561p

Stephen J. Withrow ; David M. Vail ; Rodney L. Page : Withrow&MacEwens SMALL ANIMAL Clinical Oncology. 5th ed.,  ELSEVIER, 2013, 679-684p

【血管肉腫についてもっと知りたい方は】

このブログでは血管肉腫について、徹底解説も行なっています。
血管肉腫についてもっと知りたくなったという方はこちらをご参考ください↓↓

発見時には一大事⁈『血管肉腫』って何?① ~概要・統計~

発見時には一大事⁈『血管肉腫』って何?② ~症状・検査法~

発見時には一大事⁈ 『血管肉腫』って何?③ ~治療法・予後~

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