オタ福の語り部屋

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犬猫の肝胆道系腫瘍②~症状と検査方法~

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【はじめに】

今回は『肝臓、胆道の腫瘍 ~症状と検査方法~』について解説します。肝胆管系腫瘍には特徴的な症状がありません。全身状態の悪化や黄疸があれば、すぐに全身検査を行うべきです。

今回は肝胆管系腫瘍ではどのような症状が見られるのか、そしてどのような検査結果が肝胆管系腫瘍と診断する情報となり得るのか、そういったことを詳しくお話ししたいと思います。

【肝胆管系腫瘍はこちら】

犬猫の肝胆道系腫瘍①~概要と挙動~ - オタ福の語り部屋

犬猫の肝胆道系腫瘍②~症状と検査方法~ - オタ福の語り部屋

犬猫の肝胆道系腫瘍③~治療法とその後~ - オタ福の語り部屋

 

【目次】

 

【肝胆道系腫瘍で見られる症状とは】

『腫瘍によって症状が現れる割合』

肝臓や胆道に発生する腫瘍で症状が見られることはしばしばあります。具体的には50%の猫で、75%の犬で、症状が現れています。

『具体的な症状』

腫瘍が原因で現れる症状は特徴的な症状は少なく、非特異的な症状が基本となります。

具体的な症状
・食欲不振
・体重減少
・虚脱
・嘔吐
・多飲多尿
・腹水

黄疸
黄疸が起こる原因として肝前性(溶血性)、肝性、肝後性の3パターンがあります。今回は胆汁が作られているのに腸管への排出が上手くできてない肝後性によるものと、肝臓で作られる胆汁が肝機能の低下により不具合が生じることで起こる肝性の2つのパターンによるものです。
肝外胆管癌:肝後性黄疸
びまん型カルチノイド:肝性黄疸

黄疸を引き起こす原因(図解)

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稀に見られる症状として
虚弱、運動失調、痙攣などがあります。これらは肝性脳症や腫瘍随伴性低血糖、中枢神経への転移などが原因になります。
 

その他の症状
腹腔内出血:2匹の犬で報告があります。
 

注意点
これらの症状は肝臓や胆道の腫瘍でなくても起こる場合があります。肝炎や胆管炎などの炎症性病変であっても見られることがあるので、冷静な判断が必要です。

『身体検査はあんまり意味がない』

腹部の触診を行なったところで、肝臓腫瘤を触知できるのは約3/4症例(しかも腫瘤型のみ)しかありません。しかもそれは腫瘤型しか触知はほぼ不可能であり、結節型やびまん型では触知できません。

見落としが多くなるので、チェックする分には良いですが触知されないからといって腫瘍の存在を否定することはできません。

 

【検査方法】

『血液検査:CBC』

肝胆管系腫瘍は血液検査で特徴的な病変を示しませんが、白血球増加症や貧血、血小板増加症などが見られることがあります。

「白血球増加症」

腫瘤型の肝臓腫瘍の場合、腫瘍内で炎症や壊死が起きているので、炎症細胞が多く誘導し、血液中の白血球数が上昇します。

 

「貧血」

貧血は軽度なものから非再生性の重度なものまで、多数あります。貧血の原因として様々なことが言われていますが、詳しくはわかっていません。

 

「血小板増加症」

血小板増加症の定義は血小板数が500×103 /μL以上とし、腫瘤型肝臓腫瘍を持つ犬の約50%がこの血小板増加症を示しています。

考えられる原因
・貧血
・鉄欠乏性貧血
・炎症性サイトカイン
・トロンボポエチン(血小板産生因子)の増加
などがあります。

 

「貧血と血小板減少症」

原発性あるいは転移性の血管肉腫では比較的よく貧血と血小板減少症が観察されます。
血管肉腫についてはこちらをご参考ください↓↓

www.otahuku8.jp

 

 『血液検査:生化学』

 肝酵素の上昇は肝胆管系腫瘍でしばしば確認されます。肝酵素が上昇するということは肝細胞の障害や胆汁の鬱滞があることを示唆しています。

ただ注意点として、
・これらの上昇は腫瘍に限定したものではないということ
・肝酵素の上昇具合と肝腫瘍の悪性度は比例しないということ
以上のことをしっかりと踏まえて置かなければ、思わぬ混乱を引き起こすことになります。

「どの肝酵素が上昇しているかで見えるかも」

どの酵素が上がれば、どの腫瘍の可能性であることが高いのかある程度把握することができるらしいです。可能性の話なので、血液検査だけではなんとも言えません。
参考までにまとめましたので、どうぞ。

①ALPとALTの上昇
犬の場合、原発性の肝臓腫瘍であることが多いです。

②ASTとビリルビンの上昇
犬の場合、転移性の肝臓腫瘍であることが多いです。

③AST/ALT比が<1
肝細胞癌や胆管癌であることが多いです。

④AST/ALT比が>1
カルチノイドや肉腫であることが多いです。

 

「肝酵素以外の変化も注意」

肝酵素と言われるALTやAST、T.Bil、GGT、ALPなどの他にも変化が見られるものがあります。

肝臓腫瘍を有する動物で見られる生化学検査の変化について
具体的な変化(犬)
・低血糖:特に肝細胞腺腫の腫瘍随伴症候群で有名
・低アルブミン血症:アルブミンは肝臓で合成される
・高グロブリン血症
・食前食後の胆汁酸の上昇

具体的な変化(猫)
・高窒素血症
・ALT、AST、T.Bilの上昇

 

「腫瘍マーカー、α-フェトプロテインとは」

α-フェトプロテインとはガン原糖蛋白の1つで人間では肝癌の腫瘍マーカーとして診断や治療のモニタリング、肝癌の予後判定に使われています。

犬でも肝細胞癌で75%、胆管癌で55%が血清中にα-フェトプロテインを保有していることがわかっているため、今後診断に使えるのではないかと期待されています。

しかし、まだまだ犬の肝臓腫瘍で使用するには診断価値が低く、実用的ではありません。

Serum AFP concentration detected by the enzymetric test was significantly higher in dogs with hepatocellular carcinoma and cholangiocarcinoma. Values greater than 250 ng/ml were detected in 5 of 9 dogs with cholangiocarcinoma and in 3 of 4 dogs with hepatocellular carcinoma. 引用文献:Detection of serum alpha-fetoprotein in dogs with hepatic tumors.

 

「高フェリチン血症」

フェリチンとはほぼ全ての細胞内に存在し、鉄が必要な際に即時に利用できるように調節する役割を持っています。高フェリチン血症が認められるのは組織球肉腫とIMHAの場合です。

高フェリチン血症でIMHAが除外されたなら、肝臓腫瘍の中でも組織球肉腫の可能性が高くなります。

 

【画像診断】

肝臓腫瘍の画像診断の武器としてはX線検査や超音波検査、その他CT/MRIなどがあります。画像診断を行う意義としては肝胆管系腫瘍の診断だけでなく、ステージ分類の決定や手術計画を立てるためには多くの意義があります。
特にステージ分類を行う上で画像診断は重要であり、コア生検は転移病巣がある症例や主述不適応の症例では必ず行いたいものとされています。

『X線検査の所見』

X線検査で見られる肝臓腫瘍の特徴
・上部腹部の腫瘤
・胃の圧排性の変位
・胆管の石灰化←胆管癌の場合

X線検査の欠点
・肝臓腫瘤の診断に使えない
・腫瘤周辺の組織構造の異変が分からない
以上のことからX線検査だけでなく、超音波検査も行うことが勧められています。

 

『腹部超音波検査の所見』

超音波検査は肝臓腫瘍の検出能力が高く、腫瘤型/結節型/びまん型の3つの分類に見分けることもできるため、ぜひ行いたい検査の1つです。

腫瘤のサイズや周辺組織(胆嚢や後大静脈)への影響などを評価することができます。

腫瘍の血管新生はドップラーで確認でき、超音波検査はとても便利で有用性の高い検査方法です。

 

『生検による診断』

「超音波ガイド下生検」

FNAやツルーカット生検は肝臓腫瘍の診断に大いに貢献します。

診断率
・FNA:60%以上
・ツルーカット:90%以上

注意点
必ず、凝固能検査を行うことです。生検による出血は約5%で報告されています。

「腹腔鏡下生検」

さらに侵襲度が高くなるのですが、腹腔鏡下での生検も有効的です。
こちらの場合、より多くの腫瘤を視認下で生検できることから、診断率をより上げることができます。
そして、結節型やびまん型の場合はとても有効的です。なぜなら、腫瘤型の場合は開腹による摘出手術で生検を兼ねることができますが、結節型やびまん型は手術が適応しないため、開腹よりも侵襲度の低い腹腔鏡が有効になるのです。

 

『CTやMRIの検査所見』

CTやMRIによる検査はレントゲン検査や超音波検査よりもはるかに情報量が多い検査となります。
腫瘍のステージ分類や周辺組織への影響、血管新生の有無といった腫瘍を診断する上で必要な情報を一瞬で得ることができます。

ぜひ行いたい検査(図解)

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【最後に】

今回は肝胆管系腫瘍の症状と検査方法について説明しました。
症状は「肝臓腫瘍があればコレだ!」と言えるようなはっきりとした特徴的な症状が見られることはありません。全体的な体調不良や黄疸、腹水などが無いかをチェックし、もしそのような症状が見られるのであれば、全身の検査をオススメします。
肝臓腫瘍であると分かれば、その腫瘍がどういうタイプの腫瘍なのか、ステージはどこなのか、正確に把握し、その子の状況に合った治療を受けさせることが、予後の改善へと繋がります。
治療法と予後については次回に書いていきたいと思います。

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Withrow ; David M. Vail ; Rodney L. Page : Withrow&MacEwens SMALL ANIMAL Clinical Oncology. 5th ed.,  ELSEVIER, 2013, 405-413p

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 265p