オタ福の語り部屋

獣医学を追求する。その先に見えるものは…

『犬のリンパ腫④』~ステージ分類とは~

スポンサーリンク

f:id:otahukutan:20190417203722p:plain

【はじめに】

今回は『犬のリンパ腫~ステージ分類~』について解説します。

「ステージ分類って何?、必要なの?」

そう思われる方もいらっしゃると思います。ステージ分類は必要です。
ステージ分類はいわゆる病期分類。病気がどこまで進行しているのかを把握するためのものです。
このステージ分類によって、同じ腫瘍でも病期が細かく分けされます。腫瘍には病期ごとに効果的な治療法や予後が違うとされているため、しっかりと病期を分類を行い、それ相応の治療を行うべきです。
では、どうやってそのステージ分類は区分けされているのかやどのようにして判断していくのかについて今回は解説していこうと思います。

 

【目次】

 

【ステージ分類について】

リンパ腫だと診断がついた後、次に行うのはステージ分類です。ステージ分類を行うとどこまで進行しているかがわかります。

リンパ腫のステージ分類ではWHOステージングシステムが一般的に使用されています。ほとんどの犬(80%以上)でステージⅢ,Ⅳにまで進行しています。

犬のリンパ腫のステージ分類(WHOシステム)

f:id:otahukutan:20190316131357p:plain

 

『なぜ、ステージを知る必要があるのか?』

それはいくつかの理由があります。

①ステージごとで治療法が変わるから
一部のリンパ節にのみ発生しているリンパ腫の場合、リンパ節の切除でも良いですが全身転移しているものにリンパ節の切除だけではいけません。
ステージごとに病気との戦い方が変わるのです。

f:id:otahukutan:20190417203722p:plain

 

②予後が明確になる
リンパ腫は非常に発生数の多い腫瘍なので、ステージごとにどの程度の治療成績と生存期間があるのかが統計が取れています。

③飼い主さんに今の現状を知っていて欲しいから
一応、飼い主さん向けに書いているこのブログでは、飼い主さんにもステージ分類の大切さを知ってもらうべきだと考えています。治療をどこまで続けるのか、治る見込みがあるのか、可能性を具体的な数値で見れば、希望にもなります!

【骨髄の評価】

骨髄の評価を行う主な目的としてはステージ分類と予後の把握です。
ただ、予後の把握についてはまだはっきりとは解明されておらず、きちんとした予後判定には使えないのが現状です。

骨髄検査がオススメされる状況
・ステージングを行う時
・貧血を示す時
・リンパ球増加症
・末消血液中に異型リンパ球を認める場合
・リンパ球以外の血球減少症

 

末梢血液に異型なリンパ球がいる時
リンパ芽球や核小体明瞭な大型リンパ球が末梢血液中に見られる場合(セザリー症候群)は骨髄にまでリンパ腫が及んでいるかもしれません。

リンパ腫以外にも異型リンパ球が見られる場合があります。
・腸管内寄生虫
・IMHA
・そのほかの自己免疫疾患や感染症

これらとリンパ腫のような腫瘍性疾患を見分ける方法として、クローナリティ検査があります。
この検査ではクローナリティつまり同じ細胞だけが増殖しているのか、否かを調べる検査で顕微鏡を用いた鏡検よりも検出度が高いです。

 

【画像診断:どこまで腫瘍が波及しているか】

 『胸部レントゲン』

多中心型リンパ腫では60~75%の割合で胸部レントゲンに異常が見られる場合があります。
そしてその内訳として1/3が肺への浸潤を認めるものであり、2/3が胸腔内リンパ節や縦隔の腫脹です。

One hundred ninety-two dogs (71%) had some type of thoracic radiographic abnormality, including 80 dogs (29.6%) with pulmonary infiltrates and 164 dogs (64.4%) with thoracic lymphadenomegaly. 引用文献:Correlation between thoracic radiographic changes and remission/survival duration in 270 dogs with lymphosarcoma.

 

肺浸潤の見え方
・間質パターンや肺胞パターンが多い
・胸水が見られることもある
・縦隔リンパの腫脹はリンパ腫の20%で見られる

 

『腹部レントゲン』

腹部レントゲンを撮影すると、内腸骨リンパ節や、腸間膜リンパ節、脾臓、肝臓などの腫脹が50%の症例で認められます。
一応、ステージⅢとステージⅣの違いは肝臓や脾臓まで腫瘍が波及しているかが分類のポイントとなってくるのですが、参考図書の筆者によると、ステージⅢとⅣの予後の違いというものはそれほど大差は無く、どちらかと言うと胸部レントゲンによる縦隔リンパ節の腫脹が予後の良し悪しに大切になってくるとのことです。

『腹部超音波検査』

超音波検査の何が良いかと言うと、超音波ガイド下の生検ができるということです。
腸管や腹腔内リンパ節、肝臓や脾臓のリンパ腫を診断に必要なサンプルを採取することができるのです。

 

『PET-CTという選択肢』

現在、日本では動物へPET-CTの使用は法律で認められておりません。
海外の専門書などを見ると人医療同様、転移や進行度を診断するにはとても有益でスタンダードな検査方法となっているようです。
日本でも使える日が来るといいですね!

 

【最後に】

今回は犬のリンパ腫のステージ分類についてお話ししました。ステージ分類は治療法の選択や予後を把握する上でとても重要な情報となります。骨髄検査や画像診断を行なっていくことで、正確なステージ分類ができるようになります。

 

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Withrow ; David M. Vail ; Rodney L. Page : Withrow&MacEwens SMALL ANIMAL Clinical Oncology. 5th ed.,  ELSEVIER, 2013, 608-638p

 

【この記事を読んだ方にオススメの記事】

www.otahuku8.jp