オタ福の語り部屋

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紫外線に注意⁈『犬猫の鼻鏡にできる腫瘍』とは

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【はじめに】

今回は『鼻鏡にできる腫瘍』について説明します。
鼻表面にできる腫瘍は紫外線が影響しているとされていて、白猫で発生が多く見られます。
単なる傷やシミ、カサブタ程度だと思っていたら実は腫瘍だったなんてこともあります。
さて、早速ですが『鼻表面にできる腫瘍』についてお話ししていきたいと思います。

 

【目次】

 

【腫瘍化させるリスク因子とは】

鼻表面にできる腫瘍は猫では比較的よく見られますが、犬では一般的ではありません。鼻表面にできる腫瘍としては扁平上皮癌が有名で、紫外線が原因であると言われています。
その他にも扁平上皮癌に関与するパピローマウイルス(FdPV-2:felis domesticus papillomavirus type2)があります。
毛色が白い高齢猫が好発なので、注意が必要です。

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Whether the papillomaviruses influenced the development and behaviour of this SCC is currently uncertain, but this case provides additional evidence of the association between papillomaviruses and feline cutaneous SCC. 引用文献:Detection of two different papillomaviruses within a feline cutaneous squamous cell carcinoma: case report and review of the literature.

(日本語訳)
『パピローマウイルスが扁平上皮癌の発達に関与するか否かははっきりとは分かっていなかったが、今回の症例はパピローマウイルスと猫の扁平上皮癌との間に関連があるという証拠を提示している。』

【病理学】

『圧倒的に扁平上皮癌が多い』

鼻表面の腫瘍は圧倒的に扁平上皮癌(SCC)が多いです。
扁平上皮癌は表在性SCC(<2mm)と深部浸潤性SCCの2つがあります。 
鼻表面の扁平上皮癌の特徴は局所浸潤性が強く、転移はまれということです。

 

『扁平上皮癌以外の腫瘍』

扁平上皮癌以外で報告のある腫瘍は
・リンパ腫
・線維肉腫
・血管肉腫
・メラノーマ
・肥満細胞腫
・線維腫
・好酸球性肉芽腫
があります。

 

『腫瘍以外の可能性』

考えられるのは『免疫介在性疾患』 です。
免疫介在性疾患の特徴
・増殖性病変ではなく、潰瘍のようにえぐれた病巣が見られる
・鼻だけでなく他の部位にも似たような病変が見られる
 

【臨床徴候】

扁平上皮癌の場合、潰瘍や浮腫が見られ、次第に深部へと浸潤していきます。
猫の場合、鼻表面の外皮が肥厚してくるような病変が見られます。
一方で、犬の場合、鼻孔の粘膜が肥厚してきます。

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【診断方法】

『生検が一番いい』

全身麻酔下でのくさび状生検が診断には有効です。くさび状生検では浸潤の程度と病理組織学的診断が可能です。

『生検の注意点』

注意点①

『必ず全身麻酔をかけること』
鼻は敏感な部位なので、生検を行うとかなり痛いです。

 

注意点②

『出血に備える』
鼻から一時的に大量の血が出ることがあります。
場合によっては1~2針縫わなければならないこともあります。

 

『搔爬試験』

搔爬試験とは耳かきのようなもので皮膚の表面を削り取り、細胞成分を顕微鏡で見る検査です。
この検査方法は簡易的ですが、あまり診断価値がありません。
なぜなら、搔爬試験のほとんどが炎症性細胞しか見られないからです。
これだけでは腫瘍性病変による炎症細胞なのか、非腫瘍性病変によるもの炎症細胞なのか鑑別ができないためです。

 

『画像診断』

X線検査
あんまり転移を見つけられません。 

CT/MRI
X線よりかは診断精度は高く、ステージ分類を行う際にある程度有効と言えます。

 

【治療法】

扁平上皮癌やそのほかの腫瘍においても一番大切なのは病変の深さです。
腫瘍の"病変部が表面に限局している場合""病変部が深く浸潤している場合"で治療法が異なります。

 

『表面に限局している場合』

効果的な治療法はいくつかあります。
・冷凍外科
・レーザー治療
・温熱療法
・放射線治療:犬では効きにくい、猫では有効
などなど

これらの治療法の欠点は『腫瘍のマージンを得にくい』ということです。

 

『深部へ浸潤している場合』

むしろこっちの方が大切ですね。
深部への浸潤が見られる場合、鼻の表面を360度丸ごと切除します。
ちょっと痛々しくて可哀想にはなりますが、切除しなかった場合と比べるとはるかにQOLが上がります。
傷口は約1ヶ月程度で完治できます。
ここでの注意点は切除後の鼻の穴がカサブタなどで塞がらないようにすることです。鼻の穴が塞がってしまわぬように一時的にステントのようなものを入れ、穴を保持してあげることが良いでしょう。
この治療法は機能的かつ外見的にも良いとされていて、犬猫問わず有効的な治療といえます。

 

切除が不十分だった場合
切除が不十分であった場合は追加で放射線治療を行うと良いです。

 

【予後】

表層に限局し、非浸潤性の病変では予後は良好な経過を辿ります。
一方で、局所コントロールに失敗し、鼻表面の他の部位でも発生が見られた場合は予後が悪いです。
鼻はサージカルマージンを十分に確保することが難しく、どうしても局所コントロールに失敗してしまいます。そして扁平上皮癌は局所浸潤性が強いため、骨へとどんどん浸潤性に増殖するため、予後が悪くなってしまうのです。

 

『猫の外鼻孔切除術の成績』

38匹の猫で外鼻孔切除を行なった研究では生存期間中央値は22ヶ月でした。
外科的な切除が他の治療法と比べ、最も治療成績が良く、無発病期間(病気が再発しなかった期間)の中央値は594日でした。

All treatments were found to be effective, with surgery resulting in the longest disease-free interval (median, 594 days). 引用文献:Feline cutaneous squamous cell carcinoma of the nasal planum and the pinnae: 61 cases.

『犬の外鼻孔切除術の成績』

犬も猫同様、腫瘍の局所再発率は低いです。
ただ、鼻というサージカルマージンの取りにくさと、扁平上皮癌という局所浸潤性の強さから、予後はあまりよくありません。
予後に関する論文を色々探してみたのですが、提示するのにふさわしい論文が見つからなかったので、ここでは敢えて省かせてもらいます。


【最後に】

鼻表面にできる腫瘍について解説しました。
鼻表面は機能的、外貌的にも重要なパーツなので、早期発見を心がけるべきでしょう。そのためにも単なる傷やカサブタだと安易に考えず、あまりに治りが遅い場合は病院で検査してもらうことをお勧めします。

 

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Withrow ; David M. Vail ; Rodney L. Page : Withrow&MacEwens SMALL ANIMAL Clinical Oncology. 5th ed.,  ELSEVIER, 2013, 432-435p

Spencer A. Johnston ; Karen M. Tobias : veterinary surgery small animal. 2nd ed., ELSEVIER, 2017, 1923p

Keith A. Hnilica ; Adam P. Patterson : Small Animal Dermatology A Color Atlas and Therapeutic Guide. 4th ed., ELSEVIER, 2016, 455-456p