オタ福の語り部屋

獣医学を追求する。その先に見えるものは…

『低血糖』~血液検査を考える~

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【はじめに】

血液検査を考えるシリーズ!
今回は『低血糖』について説明します。
この血液検査シリーズでは血液検査結果をどのように解釈するかに重点を置いて、解説しています。
低血糖を示した犬猫の体内では何が起きているのか、そしてどのような病気が隠れているのかをお話ししてこうと思います。 

【目次】

 

【低血糖の定義】

『低血糖の定義はこれだ!』

低血糖とは血糖値が低い状態のことを言います。←そのまんまですが(笑)
一般的には血液検査結果で血糖値が<60mg/dLを示した時に低血糖であると言われます。(測定器によって微妙に基準値は変動します)

 

『測定値の注意点あるある』

血液検査でよくあることが、手技や犬種などの都合により、たまたま血糖値が下がってしまうということです。

間違えて血糖値が下がってしまう要因
・採血から測定までも時間が空いた場合←赤血球や白血球が糖を分解してしまうため
・溶血している場合
・人間用の血糖値測定器を使用している場合
 

【低血糖で見られる症状とは】

低血糖の定義である60mg/dLを下回った時に症状が現れることは少なく、実際に低血糖で症状が現れるのは10~20mg/dL以下になった時です。
しかし、これも低血糖が慢性化していたり、低血糖の原因によって様々です。 

『主な症状』

・震え
・意識レベルの低下
・飢え
・攻撃性の増加
などです。

 

『低血糖による神経症状』

脳の細胞は糖分を多く消費します。
糖分の枯渇により、神経症状が見られることが多いです。

主な神経症状
・虚弱
・運動失調
・行動の変化
・痙攣
・昏睡
 

【3つある、低血糖の原因とは】

低血糖の原因は大きく分けて3つあります。
それら1つ1つ順番に紹介していこうと思います。
低血糖、3つの原因(図解)

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『原因①:糖を作れなくなった』

シンプルに言うと、糖産生能が減少したということです。
低血糖の原因としては最もよく見られる原因です。
特に多いのが、子犬や子猫が十分栄養を摂れなかった場合です。
子犬や子猫は成犬・成猫と比べ、蓄えているグリコーゲンの量が少なく、頻繁にご飯を与えなければ低血糖になりがちです。

 

その他には

・門脈体循環シャント(PSS)の子
・急性肝障害
・慢性肝障害の末期ステージ
・副腎皮質機能低下症(コルチゾールの枯渇)
・エチレングリコール、エタノール
・グリコーゲン貯蔵疾患(TypeⅠ):フォン・ギルーケ病
・グリコーゲン貯蔵疾患(TypeⅢ):コリ病

 

『肝臓は糖を作るのに大切な臓器』です。
食べ物を腸から吸収し、肝臓へ栄養が運ばれていきます。
肝臓では栄養を体の中で利用しやすいように糖分に変換しています。肝臓でうまく糖を作れなくなると、低血糖になってしまうのです。

肝臓で糖ができるまで(図解)

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『原因②:血液中から糖が過剰に出ていった』

これも直接的な言い方をすれば、血液中から糖の排出が亢進しているということです。

このようなことが起こる原因としては
・インスリンの過剰分泌
・経口血糖降下薬の使用
・インスリノーマ
・インスリン様物質産生腫瘍:肝細胞癌、平滑筋種、平滑筋肉腫、癌腫、メラノーマ、形質細胞種など
・キシリトール:インスリン放出を狂わせる
・キョウチクトウ:植物

 

『原因③:上述2つ以外の原因』

・敗血症や全身性の炎症
・バベシア感染(寄生虫)
・心肺蘇生時
・α-脂肪酸
・急性/慢性腎疾患
 

【診断アプローチ】

『まずは年齢分けと身体検査を行う』

低血糖を示す犬猫では全身の丁寧な身体検査を行うべきです。
現れている症状が低血糖に起因するものなのかも照らし合わせていく必要があるでしょう。幼齢、中年齢、高齢によって疑わなければならない疾患が異なるのも特徴です。

 

「子犬・子猫で疑う疾患」

先ほどと重複しますが
子犬・子猫の場合、食欲不振が続いた後に低血糖になりやすいです。
そのほかには
・PSS(門脈体循環シャント)持ち
・敗血症
・成長ホルモンの枯渇←稀
・グリコーゲン貯蔵疾患←詳細は上記参照
・毒物の摂食
を疑います。

 

「成犬・成猫で疑う疾患」

・副腎皮質機能低下症
・PSS
・肝障害
・敗血症
・全身性の炎症性疾患
・毒物の摂食
 

「老犬・老猫で疑う疾患」 

老犬・老猫で疑うべきはズバリ、腫瘍性疾患です。
インスリンやインスリン様物質を産生する腫瘍が無いか精査する必要があります。
そのほかには
・副腎皮質機能低下症
・慢性肝疾患の末期ステージ
・敗血症
・全身性の炎症性疾患
・毒物の摂食

 

低血糖の診断アプローチ(図解)

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『血液検査(CBC)』

血液検査(CBC)では赤血球や白血球の数、割合がある程度測定できます。
この結果から低血糖の原因を考えることができます。

 

①赤血球が多い

赤血球が基準値を超えて多かった場合、『多血症(赤血球増加症)』を疑う必要があります。

 

②白血球の増加あるいは減少、左方変位

左方変位とは幼若な好中球が末梢血液に動員されているということで、感染症など好中球の要求量が亢進していることを示唆しています。

これらが見られた場合、『感染症・敗血症』を疑います。

 

③ストレスパターンの喪失

ストレスパターンとはリンパ球の減少と好中球の増加、好酸球の減少のことを言います。
このストレスパターンが見られない場合、『副腎皮質機能低下症』を疑います。

 

『血液検査(生化学)』

PSS
アルブミン(alb)↓、尿素窒素(BUN)↓、コレステロール(chol)↓『PSS』を疑います。

 

肝障害
肝酵素(ALT、AST)↑、ビリルビン(T.bil)↑で『肝障害』を疑います。

 

副腎皮質機能低下症
電解質の異常が見られることがあります。
低カルシウム(Ca)血症+低クロロ(Cl)血症+高カリウム(K)血症が見られた場合、『副腎皮質機能低下症』を疑いましょう。
詳しい副腎皮質機能低下症の解説はこちら↓

www.otahuku8.jp

 

『尿検査』

低血糖で尿糖が見られる場合、腎臓から糖が流出していることがわかります。
通常、腎臓では糖分は再吸収されるため、尿中に出てくることはありません。しかし、腎機能が低下してくると尿糖が見られる場合があります。

 

『腫瘍性疾患の血液検査、尿検査』

インスリノーマやインスリン様物質産生腫瘍の場合、血液検査や尿検査で極端な異常値を示すことは多く無いです。
そのため、全身的な身体検査が必要になってきます。

 

『画像診断』

超音波検査やレントゲン、CTなどで、血液検査や尿検査ではわからなかった病気を見つけることができます。

 

【最後に】

今回は低血糖について解説しました。

低血糖は年齢によって疑うべき疾患が異なります。

そして厄介なのが、重度の低血糖になるまで症状が見られないということです。

多少の低血糖では症状が見られないため気づきにくいです。

定期的に身体検査、血液検査、尿検査を行なってあげることが、早期発見に繋がることでしょう。