オタ福の語り部屋

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もの凄い激痛⁈『動物の急性膵炎』ってどんな病気?

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急性膵炎のアイキャッチ画像

【はじめに】

今回は『急性膵炎』を説明していきたいと思います。

急性膵炎と聞くと人ではビールを飲みすぎた中年男性がなるイメージがありますよね?

僕が中学生の頃、副担任の先生も急性膵炎になってました(笑)

その先生から聞いた話なのですが、かなり痛いそうです。あと、入院中に豆腐みたいな味のないご飯ばかりで辛かったそうです(笑)なんだか当時を思い出して懐かしくなりました。

 

って、さて思い出に耽っている場合ではありません。

今回は犬猫の急性膵炎についてお話しします。

犬や猫は晩酌しているわけでもないのになぜなるのでしょうか?

実は夜な夜な冷蔵庫を開けて食べたりしてるの?(笑)

 

冗談はさておき早速ですが、

急性膵炎になる原因、症状、治療法などを詳しくお話ししていこうと思います。

 

【目次】

 

 

【概要:急性膵炎ってどんな病気?】

膵臓の主な役割として2つあります。

1つはインスリンを分泌し、血糖値を下げる役割です。そして、もう1つは消化酵素を作り、十二指腸へ分泌して、消化を助ける役割です。

急性膵炎で問題になるのは2つ目の消化酵素です。

消化酵素は本来、十二指腸に出てきて初めて消化の役割を果たすべきなのです。

しかし、急性膵炎の場合は膵臓内で消化を開始してしまい、

自分で作った酵素によって自分を消化してしまう病気

なのです。

 

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【危険因子:発症しやすい犬種、年齢、性別、食生活、関連疾患とは?】

急性膵炎には発症しやすいリスク因子というものがあります。これらについて上記の項目を1つずつ紹介していきます。

『犬種:好発犬種はあるの?』

・トイプードル

・ミニチュア・シュナウザー

・キャバリア

・コッカー・スパニエル

・コリー種

などです。 

Miniature Schnauzers with a history of pancreatitis were 5 times more likely to have hypertriglyceridemia than controls. Hypertriglyceridemia might be associated with the development of pancreatitis in some dogs of this breed.  引用文献:Serum triglyceride concentrations in Miniature Schnauzers with and without a history of probable pancreatitis.

 

『年齢:やっぱり中年?』

中年齢〜高齢が多いです。これは人と同じなので、イメージしやすいですね。

『性別:オスとメスどっちがなりやすい?』

あまり差はないとは言われていますが、

去勢・不妊手術をしている方がなりやすい

という報告もあります。

『食生活:やっぱりこれは付き物』

・食べ過ぎ

・肥満

・高脂肪食

・人の食べ物を与えている

などがあります。

これらも人の急性膵炎をイメージしてもらえたら分かりやすいのではないかと思います。

『関連疾患:膵炎のリスクをあげる病気は?』

急性膵炎になりやすいリスクをあげる関連疾患を挙げると。

・副腎皮質機能亢進症および低下症

・甲状腺機能低下症

・糖尿病

などがあります。

これは全て内分泌疾患であり、膵臓は内分泌機能も担っていることから、何か関連があるのではないかと考えられます。

以上、膵炎になりやすい危険因子を5つの項目から挙げてみました。

5つの危険因子(図解)

5つの危険因子(図解)

【発生機序:なぜ膵炎が起こるのか?】

通常、膵臓は自ら消化してしまうこと防ぐために特別な機構を用意しています。

しかし、その機構が何らかの原因で破綻することで、膵炎を発症してしまうのです。

『膵臓の外分泌機構について』

膵臓はトリプシンやチモーゲンを合成し、分泌しています。

正常の膵臓ではこれらは膵臓内では不活性化されており、十二指腸の腸上皮刷子縁にあるエンテロペプチダーゼと呼ばれるものに触れることで活性化されるようになっています。

また、膵臓内においてもチモーゲンは腺房内にチモーゲン顆粒として隔離されており、トリプシンに関してはトリプシンインヒビターと呼ばれるトリプシンの活性化を抑える酵素が存在しています。

これらの機構のおかげで、膵臓では機能しない消化酵素が、十二指腸ではうまく機能するようになっているのです。

だが、なぜ機構が破綻するのかという肝心なところは未だに解明されていません。

膵臓の外分泌機構(図解)

膵臓の外分泌機構(図解)

【症状:急性膵炎の時に見せる症状とは】

消化器の病気なので、一番顕著に症状が出るのはやはり『腹痛』です。

人の膵炎でもかなりの腹痛があると言われていますが、動物でも同様みたいです。

腹痛以外には『嘔吐』『活動性の低下』『下痢』があります。

上記の症状は犬で見られるもので、猫では『食欲の低下』『活動性の低下』のみが認められます。

急性膵炎がかなり、重度であった場合は『ショック』や『DIC』といった死に直結しうるまで状況が悪化するため注意が必要です。

膵炎を発症している犬の11%が血液凝固異常を示すという報告もあります。

腹痛が出ている時、犬はどのような行動をとるのでしょうか?

よく言われるのが『祈りのポーズ』です。

イスラム教徒がメッカに向かってお祈りをする姿勢に近いと個人的には思っています。

ただ、猫はこのポーズはしません。

猫が腹痛を訴えている時は『じっと丸まって動かない』

 

【診断:膵炎と決定するには?】

『①危険因子から発症の可能性を予測する』

前述した【危険因子】から膵炎になりやすい犬であることを認識しておくことが早期発見に繋がります。

要注意なのが、

『中年以降の肥満の雌犬』です。

危険因子の掛け合わせと言わんばかりの対象です。当てはまる場合は要注意です。

『 ②症状から予測する』

これも前述の【症状】を参考にしてください。

犬ならば『祈りのポーズ、嘔吐、下痢、元気がない』ならマークが、

猫なら『じっとうずくまる、食欲の低下』でマークです。

①、②はお家でも発見できる症状です。よく注意して見ていてください。

『③血液検査で精査する』

①、②の症状を訴えきた場合、膵炎を強く疑うのですが、念のために血液検査で精査を行う必要があります。検査項目別に説明していこうと思います。

「CBC(一般血液検査)」

好中球増加を認める(62%)

脱水によってヘマトクリット値や総蛋白の上昇を認める

血小板減少症を認める(59%)

「炎症マーカー:CRP(犬)、SAA(猫)」

この2つは体の中で炎症が起きていることを示すマーカーで、どこで炎症が起こっているかまでは特定できないが、炎症を見つける能力は高いです。

犬の場合、CRP(C反応性蛋白)

猫の場合、SAA(血清アミロイドA)が膵炎の時にはほぼ必ず上昇しています。

「膵特異的リパーゼ」

膵特異的リパーゼ(PLI)

現在、膵炎の血液検査で一番有用性があると言われているものです。 しかし、これは猫ではいまいち決定力に欠けるため、犬でのみ信用されています。

『④念には念を。超音波検査』

超音波検査は比較的侵襲度は低く、行いやすいためやることがあります。エコーで膵臓を映し出し、炎症が起きているかを評価します。

【治療法:ど定番の5本柱】

『①輸液』

主に2つの役割があります。

1つ目に膵炎によって消化管がうまく機能できておらず、水分を吸収できていないため、それを補うことです。

2つ目は膵臓自体の循環を改善するためです。

『②嘔吐を防ぐ』

嘔吐は酸性の胃酸が体外へたくさん出てしまい、血液のpHを大きく変えるしまうため早めに防ぎたいです。そのために『制吐剤の投与』を行います。

僕は薬理学が好きなので、ちょっと追加で書きますが投与する薬は

・5HT3受容体拮抗薬のオンダンセトロン

・ニューロキニン(NK1)受容体拮抗薬のマロピタント(セレニア®️)

が有効です。

『③栄養補給は一番大事』

一昔前は膵炎の治療法に『絶食・絶水』というやり方がありました。

しかし、今では『絶食・絶水』は免疫力の低下や栄養不足による治療の遅れが懸念され、あまり積極的には行われていない。むしろ、なるべく消化管を使って栄養補給を行うようにしています。

もちろん、大前提として食事を与えるのは『状態が安定している』ことが条件ではありますが

無理やり食事を与えて吐いてしまうようでは、むしろ有害であるためになります。

僕がやらかした失敗談

むかーしの話ですが、僕は動物病院でバイトしていました。

膵炎で入院中で絶食中だった犬に間違えて、ご飯をあげてしまいました。もの凄いお腹が空いていたんでしょうか、あまりのガッツキ具合に嬉しくなり、僕は先輩に「この子、すごい食べますよー(笑)」と話しました。

すると当然、先輩は猛ダッシュでその子のお皿を取り上げ、僕はこっぴどく怒られました(笑)あの先輩怖かったな…(笑)

当時、まだその病院では『絶食・絶水』という治療法を行なっていたんだなと思います。

『④痛みを取り除いてあげる』

膵炎はかなりの腹痛を伴うとされています。

鎮痛薬を用いて早急に痛みを取り除いてあげましょう。

非麻薬系鎮痛薬ではブトルファノールブプレノルフィンがあり、

麻薬系鎮痛薬ではモルヒネフェンタニルなどが勧められています。その子の状態に合わせて選択します。

『⑤抗炎症治療』

抗炎症治療としてはステロイド薬であるプレドニゾロンが勧められています。

よく治療で使われるNSAIDsと呼ばれる非ステロイド系消炎剤は腸管の粘膜を傷つける副作用があるため、この場合は使われません。

重篤な膵炎の場合、ショックや炎症を抑えるためにもステロイド剤を使うべきです。

膵炎の治療を支える5本柱(図解)

膵炎の治療を支える5本柱(図解)

【急性膵炎の療法食とは】

急性膵炎では低脂肪食が薦められています。

ここで、2つほどおすすめの低脂肪食を紹介します!

1つ目はロイヤルカナンの消化器サポート(低脂肪)です。

もう1つはヒルズ・コルゲートの消化器ケア(low fat)です。

 どちらも低脂肪食で消化に優しいように作られています。

膵炎を発症し、衰弱した消化管にはうってつけのフードですね。 

 

【さいごに】

急性膵炎について説明しました。

動物の急性膵炎についてなんとなく理解して頂けましたか?

別に夜な夜な冷蔵庫を開けて何か食べているわけではないみたいですね(笑)

基本的には食事が大事だと僕は思います。高脂肪な食事や人間が食べているものをたくさん与えていると急性膵炎になってしまうかもしれません。

膵炎は強烈な腹痛を与えるため、早めに見つけてあげてください。そして、ペットを愛するゆえに食生活へも配慮してあげてほしいです。

 

【本記事の参考書籍】

Stephen J. Ettinger ; Edward C. Feldman ; Etienne Cote : Textbook of veterinary internal medicine. 8th ed., ELSEVIER, 2017, 1683-1688p

日本獣医内科学アカデミー編 : 獣医内科学 第2版, 文英堂出版, 2014, 283-285p

 

【この病気の経験談、闘病記はこちら】

 

www.withdog.site

 

【オタ福診療所はこちら】

www.withdog.site