オタ福の語り部屋

獣医学を追求する。その先に見えるものは…

覚悟してる・してないで全然違う、『抗がん剤の副作用』

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【はじめに】

今回はペットの抗がん剤治療中に生じる『抗がん剤の副作用』について話したいと思います。抗がん剤の副作用は予めどのような症状が出るかを知っておくことで、万が一ペットが嘔吐や発熱を呈した時、慌てなくてすむはずです。よく、抗がん剤というワードを聞いただけで「可哀想だからやめてあげて」と言われる飼い主さんがおられます。

人間と比較して、動物の抗がん剤の副作用というのは比較的軽度であることが多いです。この記事ではそういった副作用の心配をされている飼い主さんにとって有益な情報が提供できればと思い、書いてみました。抗がん剤の副作用について予め知っておくことで急な異変にも臆することなく対応できるのではないでしょうか?

 

抗がん剤は細胞毒性により癌細胞を壊していく薬であり、その分正常な細胞も傷害を受けます。副作用を正しく知ることは抗がん剤への恐怖心を取り除くことにもつながるので、よく知っていてほしいです。

前回の抗がん剤シリーズ

こちらの記事も参考にしてください↓↓

www.otahuku8.jp

 

【目次】

 

 

 

【どんな症状が出るの?副作用の種類とは?】

副作用の種類は大まかに3つに分けられます。

①骨髄毒性(Bone Marrow toxicity)

②脱毛(Alpecia)

③消化器毒性(Gastrointestinal toxicity)

英語の頭文字をとって「BAG(バッグ)」なんて言われることもあります。また、どの抗がん剤を使うかによっても出る症状が異なるので、抗がん剤についての詳しい説明はまた別の機会にできたらいいなと思います。では、この①〜③を詳しく説明して行きます!

 

【骨髄毒性】

『骨髄って?』

骨髄は骨の中心部にある血液成分を造る器官です。だから、医学では造血器官なんて呼ばれています。骨髄では赤血球、白血球、血小板といった血球を常に作っています。抗がん剤は増殖が盛んな細胞でよく効くため、骨髄はまともに攻撃を食らう器官の1つなのです。

 

『どの血球が減少するの?』

血球には各々“寿命”があり、赤血球は120日(犬)、60〜80日(猫)、白血球の1つである好中球は8時間、血小板は7〜8日。基本的には寿命が短いものから減っていく。つまり、好中球と血小板です。特に好中球は免疫に関連する血球なので、感染症などにより急に体調を崩す原因になりやすいです。獣医は投与前に必ずこれらの血球が減っていないかを血液検査でチェックしてから投与しているはずです。

 

『好中球だけが原因じゃない、感染症のリスク因子はなに?』

先ほど抗がん剤を使用すると免疫を担っている好中球が減ってきて 、感染症が起こりやすくなると書いきました。しかし、原因はそれだけではないです。抗がん剤のせいで感染症を起こしそうな病気を発症していないかチェックしなければならないでしょう。

例えば、皮膚がボロボロになっている。胃や腸が炎症を起こしている→うんちとかに血が混ざってないか。膀胱炎で血尿やおしっこする時に痛そうにしている。

このような病変が出ていないかは飼い主でもチェックできるので、注意深く観察してあげてほしいです。

 

『好中球が減った時に出る好中球減少症』

抗がん剤の使用を続けていった結果、好中球が減少した状態を好中球減少症と言います。具体的にいうと、末梢血液の血液検査で好中球数が3000/μLを下回った時のことを言います。〇〇症とついていますが別に症状がなければ、治療はしなくていいです。ただ、「発熱」がある場合と「発熱+何か症状」がある場合は要注意です。すぐに病院に連れていきましょう!

 

『まとめ①』

・好中球や血小板がよく減りがち

・ 皮膚やうんち、おしっこに異常がないかをこまめにチェック

・発熱や何か症状がある場合はすぐに病院へ

【脱毛】 

抗がん剤というと毛が抜け落ちてしまうというイメージあると思いますが、動物ではツルツルになる程抜けてしまうことはないです。

『なぜ毛が抜けるのか?』

なぜ毛が抜けるのかだが、それは抗がん剤が毛の成長を止めてしまうからです。毛には成長期と休止期の2つのサイクルがあります。日々抜けてはまた成長してを繰り返している。抗がん剤を投与している間は毛の成長が止まっているため、今ある毛が抜けてしまえば、生えない。だから、毛が薄くなっていきます。安心して欲しいのは毛根自体が完全に死滅しているわけではないので、我らがお父さんみたいに『あの頃の髪はもう戻らない』なんてことはない(笑)。抗がん剤をやめればちゃんと生えてきます。

 

『犬種によって抜けやすさが異なる』

というのも犬種によって、成長期と休止期の割合が異なるからです。もちろん、成長期の毛が多い犬種の方が抜けやすいのは自明です。

抜けやすい犬種:オールドイングリッシュシープドッグ

 

『そのほかの症状』

毛質や色が変化したり、猫ではヒゲが抜け落ちたりします。あと、医療処置で毛刈りをした部位が生えにくかったりするのですが、そこはご容赦して頂きたいです(笑)

 

『まとめ②』

・毛が抜けるは抗がん剤が毛の成長を止めてるから。また生えてくる。

・成長期の毛が多い犬種ほど、脱毛が顕著になる

・毛が抜けるだけでなく、他にも症状が出る

 

【消化器毒性】

消化器毒性とは消化管(口、食道、胃、腸)に出てくる副作用のことであります。消化管は粘膜上皮と言われる細胞で覆われています。この粘膜上皮は絶えず新しいものに入れ替わっているため、抗がん剤の使用により粘膜の入れ替わりが滞ると粘膜はボロボロになりやすいのです。消化器毒性は大きく分けて「食欲不振」「悪心/嘔吐」「下痢」の3つがあります。

『食欲不振』

抗がん剤には消化管の粘膜をボロボロにする副作用があります。いうならば、常に口内炎や食道炎、胃炎が起こっている状態なので、そりゃはご飯を食べる気にもなりにくいだろうという話です。わんちゃんは食べるのが大好きなので、それを制限されるのは本当にかわいそうです。

 

『悪心/嘔吐』

嘔吐は急性と遅発性と予測性があり、それぞれの嘔吐の原因は異なります。なぜ、嘔吐が起こるのかを知っておくと、いざペットが吐いちゃった時パニックにならなくてすむでしょう。

急性の場合(投与後1時間〜24時間)

①CTZ経由の嘔吐

抗がん剤を使用すると第四脳室に存在するCTZ(化学受容体引金帯)と呼ばれる部分が直接刺激される嘔吐

②セロトニン経由の嘔吐

抗がん剤の使用により、クロム親和性細胞からセロトニンが分泌され、CTZや孤束核を介して行われる嘔吐 

この2つがあります。要約すると抗がん剤には動物のある部位を刺激して、嘔吐を促すのです。

遅発性の場合(投与後24時間以降、2〜5日ほど続く)

腸粘膜の障害によるものや抗がん剤によって産生したサイトカインが関与し、ニューロキニン(NK1)受容体を刺激するために起こるとされています。

予測性の場合(人で多い)

不安や恐怖、臭いなどから、大脳皮質を経由して嘔吐中枢が刺激され起こるものがあります。

 

『下痢』

こちらも2つ原因があります。

①腸の動きが早くなっている

抗がん剤はコリン作動性作用という腸の動きを速くする作用があります。これにより、下痢になってしまいます。

②腸の粘膜がボロボロになっている

副作用としてはこっちが原因であることが多いです。腸粘膜の障害により、下痢になります。

『まとめ③』

・「食べない」のは粘膜がボロボロになっているから

・「吐く」のは抗がん剤が吐かせるような薬だから

・「下痢」なのは腸の粘膜がボロボロになっているから

 

【さいごに】 

抗がん剤の副作用について大まかな話を書いてみました。抗がん剤治療中のペットが何か異変を示した時、抗がん剤による影響なのか、本当に危険な状態なのかをしっかり理解しておくことで、飼い主の不安を減らすことができると思います。ぜひ、この記事を参考に愛するペットの闘病生活をサポートしてあげて欲しいです。

 

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